ホーム 緊急情報 ベネズエラ概観 二国間関係 大使館案内 文化班案内
リンク集 お知らせ ご意見・ご要望      

 

 政治月報

 (バックナンバー)

 経済月報

 (バックナンバー)

 文化情報

 ベネズエラ略史

 プロフィール

  ・国旗・紋章

  ベネズエラ・マンスリー政治情報(平成22年 1月)

 

     


   

政 治 概 況

1.内  政

(1)チャベス大統領は、年頭演説の中で、2010年に、反政府側が自身に対する罷免投票を提起しないのであれば、自ら提案し、同時に大統領連続再選を可能とする憲法第230条の修正についても問う可能性を示唆した。

(2)昨年の憲法改正国民投票の実施等により延期されていたベネズエラ統一社会党(PSUV)結成大会が12日に開催された。これに対し、23日、反政府主要政党幹部は、今年11月に実施が予定されている地方選挙に向けた共闘合意に署名した。

2.外  交

(1)10日、FARC人質2名がベネズエラ政府及び国際赤十字等が参加するミッションに引き渡された。これに対し、16日、コロンビア政府は人質救出を名目にコロンビアに対する批判活動を展開しているとしてチャベス大統領に抗議文を送付した。同抗議を受け、20日、チャベス大統領は、和平実現のために努力している自身を、米国が「脅威」として繰り返し攻撃することに遺憾の意を表明するとともに、コロンビア政府が米国人を招待してベネズエラを攻撃させていると批判した。

(2)14日のコロン・グアテマラ大統領就任式を利用して、チャベス大統領は、同国ならびにホンジュラス、ニカラグアを公式訪問した。各首脳会談では、エネルギー協力を始め、食糧安全保障等につき協議された。

(3)26日、ベネズエラで開催された第6回ALBAサミットで、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグア、キューバにより構成される、資本金10億ドル、事業資金20億ドルのALBA銀行設立合意が署名された。

             

内 政

1.チャベス大統領の年次報告

(1)11日、チャベス大統領は、国会で約4時間に及ぶ年頭演説を行い、2010年に、反政府側が自身に対する罷免投票を提起しないのであれば、自ら、罷免投票を実施するのも一案であると述べ、その際、大統領連続再選を可能とする憲法第230条の修正についても問うこととしたいと発言した。一方、「自分が罷免されるようなことになれば、政治の舞台からは身を引き、再度立候補するようなことはない。また、自分がベネズエラにとり不可欠であるというわけではないが、「ボリーバル革命」遂行のためには、(2013年から)更に数年間国家の舵取りを行う必要があると思う。」と発言した。

(2)チャベス大統領は、コロンビアの和平につき発言し、FARC及びELNは、政治プロジェクトを有す、本格的な軍事組織であり、テロ組織ではなく、抗戦団体として捉えられるべきであると主張した。併せて、人質解放に向け、コロンビア政府及びこれらゲリラ組織と協調していくと発言した。更に、EUを中心とする諸国に、テロ組織のリストからFARC及びELNの名を削除するよう要請した。今次演説に臨席していたマリン駐ベネズエラ・コロンビア大使は、チャベス大統領の右発言を聞くや、退席した。

(3)チャベス大統領は、2007年の政権運営に関し、いくつかの過ちを認めるとともに、完全に満足しているわけではないとしながらも、社会経済面における達成事項につき要約した。同大統領は、社会ミッション(貧困者対策社会プログラム)の再始動と貧困率の削減につき言及し、(自身の当選した)1998年当時と比べて、貧困率が48.1%から33.1%に、絶対的貧困率が20.3%から9.4%に下がったと発表した。また、2007年の8.4%という経済成長率及びIMF・世銀に対する債務返済完了も重要な成果であると述べた。

                  

 

       

2.ベネズエラ統一社会党(PSUV)結成大会の開催

(1)12日、カラカス市内のサン・カルロス旧兵舎(現在は博物館)でベネズエラ統一社会党(PSUV)結成大会が開催された。大会にはチャベス大統領、PSUV推進委員長であるロドリゲス前副大統領、同推進委員のカベージョ・ミランダ州知事、閣僚及び、全国各地から1,676名の代表者が出席した。

(2)演説の中でチャベス大統領は、革命は、ある特定の個人や指導層に依存すると脆弱になるとし、国民の意志に基づくべきであると述べるとともに、PSUV内での派閥やボリーバル主義的オリガルキーを撲滅し、直接民主主義を推進するよう主張した。また参加者も、昔からの党の有力者が人事を支配するのではなく、参加者自身が望む候補を投票により選出すべきであると主張した。

  

 

   

3.反政府政党による共闘合意署名

(1)ペレス・ヒメネス軍事独裁政権終了から50周年に当たる23日、政府側、反政府側それぞれの主催による集会が開催された。政府側は、サン・カルロス旧兵舎(現在は博物館)で特別国会を開催し、ルシアン会計検査院長が、文民・軍部両セクターにおける民主主義維持のためには、進歩主義的、反帝国主義的セクターの結束が必要であるとの演説を行った。エルナンデス国会第一副議長も、国家の解放に向けた結束を呼びかけた。

    これに対し、反政府側は、正午頃にカラカス市中心部にあるモラレス広場に集結した。同広場で政治家、学生運動指導者等が演説を行った後、護民官組織や検察庁へデモ行進を行い、2007年5月に国会に提出された恩赦・政治和解法案の国民投票による承認を求め、更に全国選挙管理委員会(CNE)前で、昨年末チャベス大統領により署名された恩赦特別法の無効を求める国民投票実施を要請した。

(2)同日、新時代党(UNT)、民主行動党(AD)、キリスト教社会党(COPEI)、正義第一党(PJ)、社会主義運動党(MAS)等、反政府主要政党幹部は、今年11月に実施が予定されている地方選挙に向けた共闘合意に署名した。各党は、コンセンサスや世論調査等を行った上で、各州、各市の選挙において反政府の統一候補を擁立することで合意した。

 

   

 

4.シモン・ボリーバル死因究明大統領委員会の設置

(1)28日付官報掲載をもって、カリサレス副大統領を筆頭に関係各省大臣より成る、シモン・ボリーバル死因究明大統領委員会が設置された旨報じられている。同委員会は、ボリーバルの死及び遺体のベネズエラへの移送に関する歴史的事実を「復元」すべく、データの収集、編纂、システム化を行う。

(2)歴史上シモン・ボリーバルは、コロンビア(サンタ・マルタ)において結核が原因で病死し、死後20年経った後に、ベネズエラへ遺体が移送されたことになっているが、死因については明確でない部分もあり、チャベス大統領は、当時のヌエバ・グラナダ(現在のコロンビア及びパナマ)のサンタンデール大統領により毒殺された疑いがあるとしている。またチャベス大統領は、国立霊廟に安置されている遺体が真にボリバルの遺体であるかどうかにも疑問を呈している。

(3)上記のようなチャベス大統領の発言について、反政府側は、チャベス大統領がボリーバルの死をコロンビア・オリガルキーの仕業であると主張し、ウリベ政権をコロンビア・オリガルキーと結びつけることで、同政権を批判するつもりであるとの見方をしている。

 

 

 

外 交

     

1.FARC人質解放問題

(1)9日、チャベス大統領は、FARC側からコロンビア山中における、人質2名(クララ・ロハス氏及びコンスエロ・ゴンサレス氏)の居場所の通報を受けたことを明らかにし、翌日(10日)、国際赤十字委員会メンバーと共にベネズエラ側からヘリコプターを飛ばし、人質が解放されることへの期待を示した。右発言直後、コロンビア政府は人質2名引き取りのため、ベネズエラ政府がミッションを送ることを認めた。9日午後には、マドゥーロ外相がコロンビアを訪問してアラウッホ・コロンビア外相と会談し、同オペレーションに対するベネズエラ政府の申し入れを伝えた。

(2)10日11時30分、チャベス大統領は、人質2名が既にチャシン内務司法相に引き渡されたことを認めた。同大統領は国際赤十字委員会の役割を評価しつつ、前日に人質の居場所が判明した後、全てが始動し、10日早朝、タチラ州ブエナベントゥーラ飛行場からサンホセ・デル・グアビアレに向けてヘリコプターが出発したと述べた。また、自身は人質の解放場所について承知していないとしつつ、同地点から「人質を受け取った」とのチャシン内務司法相の電話連絡を受け、その場で人質2名及びFARCメンバーと電話で話をしたと述べた。なお、チャベス大統領によれば、コロンビア政府の要請により、9日の夕方から、同オペレーションにキューバ大使も加わった。

(3)16日、コロンビア政府は、チャベス大統領に対する抗議文書を発出し、人質交換問題につき、同大統領がFARCの味方をしていると批判するとともに、コロンビアに対する攻撃を止めるように求めた。同文書は、チャベス大統領が、人質交換への仲介の機会を利用してコロンビア、コロンビア政府及び同国指導者を攻撃しているとしている。
 同日、チャベス大統領は、コロンビア外務省がマドゥーロ外相宛に抗議文書を発出したことに言及し、「文書を送りたければ勝手に送ればよい。しかしベネズエラはコロンビアで和平が実現されるべきであると主張し続ける」と発言した。また、コロンビア政府が、米帝国の指示に従い和平実現を遅らせている、と批判した。

(4)20日、チャベス大統領は、自身のテレビ・ラジオ番組「アロー・プレシデンテ」で、コロンビア訪問中のウォルターズ米麻薬取締局(ONDCP)長官が、チャベス大統領を「麻薬取引のファシリテーター」と呼んだことにつき、和平実現のために努力している自分を、米国が「脅威」として繰り返し攻撃することに遺憾の意を表明した。

   チャベス大統領は、コロンビア政府がこうした米国人を招待してベネズエラを攻撃させていると述べ、コロンビア政府及びウリベ大統領を恥知らずであると発言するとともに、ラ米の人民の利益に反し行動する、「帝国の悲しき兵卒」と批判した。

(5)24日、ベネズエラの民放Zuvision局は、ディ・マルティーノ・マラカイボ市長(スリア州)が、FARC及びELN関係者と見られる者に食糧その他の物資を渡している場面を報じた。同日、スイス訪問中のウリベ・コロンビア大統領は、深刻な問題であるとして、コロンビア国防相及び司法当局と対応を協議すると述べた。

   一方、サントス・コロンビア副大統領は、FARCに関与している者は、いかなる形の関与であっても、支援者であり、テロ容疑で裁かれるべきであると発言した。ビデオについては承知していないと述べたが、ビデオという証拠があるならば、我々がすべきことは、逮捕し、刑務所に送ることであると発言した。

(6)25日、チャベス大統領は、コロンビアが米国の兵卒として、ベネズエラに対する軍事的挑発を計画していると批判した。同大統領は、米国がコロンビアにおける和平を望んでいないと述べ、(コロンビア・ゲリラの問題は)米国にとり大規模な軍や諜報機関関係者を送り込むための良い口実となっていると批判した。

         

              

2.対ラ米諸国関係

(1)ドミニカ国首相の来訪

(イ)10日、ベネズエラを訪問したスケリット・ドミニカ国首相は、チャベス大統領と2時間にわたり会談した後、同国がALBAへ正式加盟する意向を表明した。ドミニカ国は昨年2月20日にALBA加盟に関する了解覚え書きに署名していた。

(ロ)チャベス大統領は、技術的な調査は既に終えているため、近い将来、ドミニカ国に東カリブの諸国への石油供給を可能とする精油所の建設が開始されると発表した。また、カリブ地域の統合促進に向けて、両国間の混合委員会が設置されることが合意された。

(2)チャベス大統領のコロン・グアテマラ大統領就任式出席

(イ)14日、チャベス大統領は、グアテマラを訪問し、コロン大統領就任式に出席した。チャベス大統領は、石油に対する大きな需要は継続すると述べ、コロン大統領に対し、ペトロカリブへの参加を促した。これに対しコロン大統領は、優遇価格で燃料を調達出来るペトロカリブに完全に賛同しているとし、ペトロカリブへの加盟につき検討すると発言した。

(ロ)チャベス大統領は、グアテマラの空港に到着するや、FARCにより誘拐されたコロンビア人及び米国人を解放するための協力を各国に求めたが、FARCやELNをゲリラ組織のリストから外すようにとの11日の呼びかけについては言及を避けた。このほか同大統領は、サルコジ仏政権の特派大使であるラマ・ヤド外務・人権問題担当閣外大臣より、今次人質解放仲介に対するサルコジ首相による謝意表明の書簡を受領した。

(3)チャベス大統領のホンジュラス訪問

(イ)15日、チャベス大統領は、初めてホンジュラスを公式訪問し、セラヤ大統領と会談した。両首脳は、ホンジュラスがベネズエラより2年間、年額7億5千万ドル分の石油、ディーゼル油、ガソリンを優遇価格で購入するための仮合意に署名した。チャベス大統領によると、ホンジュラスは代金の60%を90日以内に支払い、残りの40%については、ペトロカリブの返済方式(報道によると、2年間の支払い猶予期間の後、1%の利子で25年間かけて返済)に則ると発言した。

(ロ)チャベス大統領は、3千万ドルにおよぶベネズエラのホンジュラスに対する80年代の債権を放棄すると発言した。また、ホンジュラスのペトロカリブ加盟につき、セラヤ大統領は、自国のエネルギー問題解決に向けた最良の手段であると発言し、チャベス大統領は、ホンジュラス国会がペトロカリブ加盟を承認することを希望すると述べた。更にチャベス大統領は、セラヤ大統領に早期のベネズエラ訪問を招請するとともに、両国間関係強化に向けた二国間混合委員会の設置を提案した。

(4)チャベス大統領のニカラグア訪問

(イ)16日、ニカラグア訪問中のチャベス大統領は、オルテガ大統領とともにマナグア市内のホテルで、ニカラグア企業及び協同組合組織との会合に出席した。この会合において、チャベス大統領は、来る25日にALBA首脳・閣僚会議を開催予定であること、また同会議においてALBA銀行が創設される予定であると述べた。

(ロ)同大統領は、2008年も米国やベネズエラ国内オリガルキーが、牛乳、食肉の不足といった問題を継続させると発言した。また昨年はブラジルから40億ドル、コロンビアより50億ドル分の食糧輸入を行ったが、ニカラグアからの輸入を早急に開始したいと述べた。ブカルド・ニカラグア農牧相によると、同国は今年6千トンの黒豆、6千トンの食肉及び2万3千トンのモロコシをベネズエラに輸出予定である。

(5)第6回ALBAサミットの開催

(イ)26日、チャベス大統領は、ベネズエラで開催された第6回ALBAサミットの席上、米国が経済危機に直面していると述べ、加盟諸国に米国銀行における保有外貨を南米銀行やALBA銀行に移転するよう呼びかけた。ニカラグアのオルテガ大統領はチャベス大統領に同調し、資本主義モデルは持続不可能で、失敗に終わったと述べ、社会主義こそが唯一の選択肢であると主張した。

    また、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグア、キューバにより、資本金10億ドル、事業資金20億ドルのALBA銀行設立合意が署名された。

(ロ)同日署名された共同政治宣言では、米国政府の好戦的な態度やラ米諸国政府への攻撃に対する非難がなされた。更に、エネルギー安全保障条約の締結を通じた多国間エネルギー企業の設立、食糧安全保障協定、キューバ・ベネズエラ間海底ケーブルの設置、ホンジュラスのペトロカリブ正式加盟、及びドミニカ国のALBA正式加盟等7つの合意に署名がなされた。

(ハ)サミットにはモラレス・ボリビア大統領、オルテガ・ニカラグア大統領、ラヘ・キューバ国家評議会副議長、スケリット・ドミニカ首相、スペンサー・アンティグア・バーブーダ首相、ゴンサルベス・セントビンセント・グラナディーン首相及びエクアドル、ホンジュラス、ハイチの代表団が出席した。

   

       

         

ベネズエラ概観のトップへ