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  ベネズエラ・マンスリー政治情報(平成20年 3月)

 

     


   

政 治 概 況

1.内  政

(1)9日、ベネズエラ統一社会党(PSUV)の全国中央委員選挙が実施され、役員候補者15名及び補欠15名、合計30名が選出された。またチャベス大統領は、全国を9地域に分割し、各地域担当の副党首を任命した。

(2)25日、国会本会議は、アスアヘ国会議員(PSUV所属)より要請のあった、バリナス州におけるチャベス大統領親族の汚職に関する調査開始を決定した。同決定に基づき、26日、アスアヘ議員は証拠資料を国会に提出した。

2.外  交

(1)1日、コロンビア軍がエクアドルとの国境におけるFARC掃討作戦において同国側に越境して攻撃を行い、FARCのNo.2であるレジェス幹部他が死亡した件について、2日、チャベス大統領はコロンビア国境への部隊派遣、在コロンビアの大使館閉鎖を命じた。しかし、7日のリオ・グループ首脳会合におけるチャベス大統領とウリベ大統領の歩み寄りもあり、9日、ベネズエラ政府はコロンビアとの外交関係の正常化を発表し、召喚されていた両国外交官は任務に復帰した。

(2)大統領就任後初めてフェルナンデス・アルゼンチン大統領がベネズエラを公式訪問し、チャベス大統領と農業・エネルギー等に関する協力合意に署名した他、エクアドルへのコロンビア国軍侵入問題につき協議するためコレア大統領がベネズエラを訪問した。一方、チャベス大統領はブラジルを訪問し、ルーラ大統領と両国国営石油会社参加のアブレウ・エ・リマ精油所の建設等につき協議した。

             

内 政

1.ベネズエラ統一社会党(PSUV)関連

(1)9日、ベネズエラ統一社会党(PSUV)の全国中央委員選挙が実施された。同日夜にミューレル・ロハス副党首は、役員候補者15名及び補欠15名、合計30名の名前を発表した。今次選挙で最も票を獲得したのは、イストゥリス前教育・スポーツ大臣で、これに大統領の実兄であるアダン・チャベス教育大臣が続く。この他、ロドリゲス前副大統領、フローレス国会議長、ロドリゲス駐キューバ大使(前外相)等が名を連ねている。

(2)19日、チャベス大統領は、ベネズエラ統一社会党(PSUV)の副党首を任命した。第一副党首はアルベルト・ミューレル・ロハス前大統領参謀長で、この他に全国を9地域に分割し、各地域に以下のとおり副党首を任命した。

  • エスカラ国会議員(アラグア及びカラボボ州)

  • イストゥリス前教育・スポーツ大臣(首都区、ミランダ及びバルガス州)

  • ムニョス・ポルトゥゲサ州知事(中央平原地域)

  • レジェス・ララ州知事(中西部地域)

  • ロドリゲス駐キューバ大使(アンデス地域)

  • イグレシアス軽工業・貿易大臣(東部地域)

  • サンタエジャ・デルタ・アマクロ州知事(デルタ・アマクロ、ボリーバル及びアマソナス州)

  • チャベス教育大臣(中央平原地域)

  • カベサス前財務大臣(スリア及びファルコン州)

(注:29日のチャベス大統領発表により、カベジョ・ミランダ州知事を加えて10人体制となった。)

                  

 

       

2.チャベス大統領親族の汚職疑惑

(1)25日、国会本会議は、ウィルメル・アスアヘ国会議員(ベネズエラ統一社会党(PSUV)所属)より要請のあった、バリナス州におけるチャベス大統領親族の汚職に関する調査開始を決定した。

    アスアヘ議員は、チャベス大統領の親族がバリナス州において少なくとも20の大農園の所有者となったと述べ、第三者名義で登録されているが、その内4つの農園に関し、チャベス一族の所有であるとの証拠を有していると発言した。26日に同議員は国会に証拠書類を提出予定である。

(2)26日、アスアヘ国会議員は、バリナス州におけるチャベス大統領親族の汚職に関する証拠資料を国会に提出した。同議員は大統領の親族が所有するとする大農園のみならず、5千頭にも上る家畜についても調査するよう要請した。

    これを受け国会会計検査委員会は、モレノ同委員会委員長を代表とする調査グループを結成した。調査グループは、ペニャ国会議員(PSUV所属)より要請のあった、アスアヘ議員の資産及び同議員のバリナス州における選挙活動資金の出所に関する調査も担当する。

  

 

   

3.人 事

(1)11日付の官報掲載により、エディス・ブルネラ・ゴメス住宅次官がペレス・プラド現大臣に替わって住宅大臣に就任した。ペレス・プラド現大臣は今年1月5日に同ポストに就任している。

(2)10日、チャベス大統領は、女性問題担当省の創設を発表し、同省大臣にマリア・レオン国立女性院長を任命すると発言した。

 

 

 

外 交

     

1.コロンビア国軍によるエクアドル領内のFARC拠点への攻撃

(イ)1日、コロンビア軍がエクアドルとの国境におけるFARC掃討作戦において同国側に越境して攻撃を行い、FARCのNo.2であるレジェス幹部を含むFARCメンバー計17名が死亡した件について、2日、チャベス大統領はコロンビア国境への部隊派遣、在コロンビアの大使館閉鎖を命じるとともに、もしコロンビアがベネズエラ領において軍事的侵略を行えば開戦も辞さないと発言した。

(ロ)3日、外務省は「ベネズエラ政府は、主権と国民の尊厳擁護のため、駐ベネズエラ・コロンビア大使及び同大使館員の即座の国外退去を命じることを決定した」とのコミュニケを発出し、マドゥーロ外相は同日、国会で右を明らかにした。

    同外相は国会において、ベネズエラはエクアドルを支持し、同国が攻撃されれば曖昧で臆病な態度ではいられないと述べるとともに、コロンビアは戦争の計画を立てており、ウリベ大統領は主権や国境は存在しないという防衛戦争の教義を押しつけようとしている、として非難した。

(ハ)5日、チャベス大統領は、ベネズエラを訪問したコレア・エクアドル大統領と共同記者会見を開き、コロンビアからの対ベネズエラ投資には興味はないと述べ、国有化できる企業があるか検討するつもりであると述べた。更に圧力計工場(カルタヘナ)の売却及び両国間ガス・パイプラインの供給停止の可能性にも言及した。また、コレア大統領に対して全面的支持を表明するとともに、ウリベ大統領に対しては好きなように国際刑事裁判所に自身を訴えるよう述べた。

(ニ)7日、リオ・グループ首脳会合に出席したチャベス大統領は、ウリベ大統領及びコレア大統領に続いて発言し、各国首脳に対し、今なら未だ大混乱を防ぐのに間に合うと述べ、再考し冷静になるよう呼びかけた。また自身がFARCに対し武器及び資金援助しているとのコロンビア政府側の主張を否定した。

    また、新たにFARC人質6名の生存証拠を持っていることを明らかにし、人質交換のための友好グループを結成することを呼びかけた。チャベス大統領は、サルコジ・フランス大統領が右に参加する用意があると述べるとともに、アルゼンチン、エクアドル、スイス、ブラジル、ボリビア、イタリアに加え、米州機構(OAS)及び国連も支援を行う意向を持っていると述べた。

(ホ)9日、ベネズエラ政府は、コロンビアに対しベネズエラ外交団を再派遣し、コロンビア政府に対しては外交団受け入れの用意がある旨通知したことを発表した。また同日、マドゥーロ外相は、通商関係の正常化及び今回国境に配備された国軍を撤退させる旨明らかにすると共に、チャベス大統領提案の和平グループ構想に対する期待を示した。

(へ)コロンビアのフェルナンド・マリン駐ベネズエラ大使は、11日にベネズエラに帰任した。他方で在コロンビアのベネズエラ大使館員11名は、10日にコロンビアに帰任した。なお、パベル・ロンドン駐コロンビア大使は昨年11月に本国に召還されたままであるが、マドゥーロ外相は同大使をコロンビアには戻さないと述べた。外務省筋によれば、右人事は昨年、FARCが解放を予定していた人質の幼児エマヌエルがFARCの手元になかった件について、ロンドン大使が適時に本国に報告しなかった責任による由。

(ト)13日夜、コロンビア政府は、チャベス大統領とウリベ・コロンビア大統領が電話で会談し、両国の立場の相違を克服するための話し合いを近く行うべく、日程を調整することで合意したと発表した。発表によると、チャベス大統領がウリベ大統領に電話をし、両首脳は、両政府間の関係改善及び両大統領間の信頼回復の意思を確認した。また両国が暴力的組織の被害者とならないような、信頼関係・協力関係の構築を改めて確認した。更に、両大統領は、全てのラ米諸国政府の関係強化を目的とし、近く会談を行うべく、日程を調整することで合意した。

(チ)17日、マドゥーロ外相は、ワシントンにて開催された第25回OAS外相協議会に出席した。同会合では、14時間にわたる議論の末にコロンビア及びエクアドル政府間の相違が克服され、米国の留保はありつつも、コロンビアによるエクアドル領侵犯を非難する決議が採択された。

    マドゥーロ外相は、今回の決議は好戦的な立場を示すいくつかの国に対し、平和と正義の勝利を示すものであるとし、同決議は米国政府の「ボイコット、サボタージュ、陰謀に対する明確なメッセージ」を含んでいると述べた。また、今回OASにおける勝利は建設中の道を強固にするものであるとし、ラ米諸国に対し、団結して取り組み、勝利を勝ち取ることを呼びかけた。

(リ)25日、チャベス大統領は大統領府で行われた外国プレス特派員との会談に於いて、ウリベ大統領と近く首脳会談を行うことで合意しており、右にはオルテガ大統領も出席する用意がある他、コレア大統領が参加して4カ国首脳会談となる可能性もあるとした。また、数日中に駐コロンビア大使を任命予定であると述べた。

         

              

2.対ラ米諸国関係

(1)対アルゼンチン関係

(イ)6日、チャベス大統領は、ベネズエラを初めて公式訪問したフェルナンデス・アルゼンチン大統領と両国間の関心事項について協議すると共に、テクノロジー、エネルギー及び農業部門における協力合意を締結した。両国が結んだ合意は以下の通り:

  • PDVSA及びENARSA間の合弁会社の設立及び燃料供給

  • PDVSA及びTAXA運送会社間のバス売買

  • PDVSA農業及びTres Arroyos間のベネズエラ持続可能な農業統合計画実施合意

  • ベネズエラ食糧生産配給公社(Pdval)とCoto Sixa社とのMOU締結

  • Pdval及びExo Logistica社とのMOU締結

  • ベネズエラ農業自治学院及びアルゼンチン農機具製造業連合間の合意

  • ベネズエラ農業組合及びMadero Training社官の農産業プラント等提供の枠組合意

  • ベネズエラにおけるアルゼンチン農機具展示会の実施

  • ベネズエラ農業・土地省に対する亜からの農機具販売商業契約

  • 食糧主権・安全保障に関する協力合意

  • エネルギー安全保障条約実施のための合意

(ロ)両国首脳間でエネルギー及び農業分野の協力合意が締結された。これらの合意により、アルゼンチンはベネズエラに牛乳、肉、小麦等を供給し、石油と天然ガスの供給を受ける。また、PDVSAとENARSAはオリノコ油田の超重質油採掘、改良のための合弁会社を設立する。

(2)対エルサルバドル関係

(イ)10日、サカ・エルサルバドル大統領は、7日のリオ・グループ首脳会合の席で、チャベス大統領から同国に対するベネズエラの内政干渉を否定する旨の説明を受けたと述べるとともに、今後両国関係は改善に向かうと発言し、チャベス大統領による説明に謝意を表明した。

(ロ)本件の発端は、マコーネル米国家情報長官が2月初旬に米国上院情報委員会に提出した資料に、ベネズエラが明2009年エルサルバドルで実施予定の大統領選挙を見越して、野党FMLNへの資金援助を行っているとの記載があったことによる。これを受けエルサルバドル政府は、ラファエル・エルナンデス駐ベネズエラ臨時代理大使を召還し、事情を聴取するとともに、本件に関する調査を命じていた。

(3)対ブラジル関係

(イ)26日、ブラジルに到着したチャベス大統領は、ルーラ大統領の提案する南米防衛評議会の創設を支持すると発言し、同評議会が帝国主義やその他地域に対する発言力強化につながると主張した。チャベス大統領は、1999年の大統領就任時に既に同様の案を提起していたと述べるとともに、アイデア自体はもともと解放者シモン・ボリーバルが1824年に抱いていたものであると発言した。またブラジルにおける精油所建設プロジェクトについては、ラ米諸国の石油公社を統合する「ペトロアメリカ」構想への布石となると発言した。

    同日夜、チャベス大統領とルーラ大統領は、教育、農牧畜、開発、食糧安全保障等に関する8つの合意に署名した。またアブレウ・エ・リマ精油所建設に向けたベネズエラ石油公社(PDVSA)とPetrobrasとの合弁企業設立契約も署名された。

(ロ)27日、チャベス大統領は、両首脳の共同宣言において、今次ブラジル訪問の成果につき、ラ米の自立とエネルギー主権確立に向けた行動がとられていると発言した。同大統領は、PDVSAがアブレウ・エ・リマ精油所建設に40%の資本参加すると述べ、併せてPetrobrasがベネズエラのオリノコベルト地帯カラボボ第一鉱区での開発に参加する可能性にも言及した。チャベス大統領によると同鉱区では500億バレルの石油原始埋蔵量が確認されている。

    これに対しルーラ大統領は、両国間の合意は南米統合の一端であり、不退転のものであると述べるとともに、ベネズエラのメルコスール加盟を切望すると発言した。

   

       

3.対米関係

(1)12日、ブッシュ米大統領は、ヒスパニック商工会議所における演説の中で、直接名前に言及しないものの、チャベス大統領が社会正義の促進と言いながら、空約束と権力欲でラ米への影響力を拡大しようとしていると批判した。また、ベネズエラ政府高官がベネズエラ国内でFARC指導者と密会していると発言した。ブッシュ大統領は、チャベス大統領が反米感情を煽る目的で、石油を浪費していると述べるとともに、国民が食糧不足に直面している一方で、近隣諸国を脅やかしていると発言した。また、エクアドル・コロンビア国境問題に関しては、チャベス大統領に代表されるテロリスト的、デマゴーグ的な見方を支持するか、ウリベ・コロンビア大統領のような民主的指導者を支持するか、いずれかの選択肢しか存在せず、自らはウリベ大統領を支持すると発言した。

(2)同日、マドゥーロ外相は、ブッシュ大統領のチャベス大統領批判が、ラ米における変革の波を阻止できない米国の焦りと無力から来たものであると応じた。また、ラ米諸国及び世界がリオ・グループ首脳会合の成果を認め、チャベス大統領その他のラ米首脳の果たした役割を評価する中、米国は黙ったままで、72時間経った後にようやく反応を示したと批判した。マドゥーロ外相は、米政府は今次問題が解決したのを残念に思っていると発言した。

(3)25日、チャベス大統領は、米国大統領選挙でどの候補が勝利しようとも、次期米国政権との関係がクリントン政権時のレベルまで改善することを期待すると発言し、ラ米及びカリブ諸国との関係に再度焦点をあてられる政府の誕生が望ましいと述べた。

    またチャベス大統領は、米国が今ほどラ米諸国との関係を悪化させたことはないと述べつつ、前日(24日)の「ブッシュ大統領はチャベス大統領に対して寛容であった」とのマケイン候補の発言を引用し、同候補もブッシュ大統領と同様、戦争支持派であるようだと評し、同候補が勝利した場合には関係改善の可能性に疑念があることも明らかにした。

    

     

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