2.対ラ米諸国関係
(1)対コロンビア関係
(イ)9日、サントス・コロンビア国防大臣がベネズエラ領内に「イバン・マルケスFARCメンバーが滞在しており、右をベネズエラ政府に通知しているものの何ら対応がなされない」と発言したことに関し、10日、マドゥーロ外相は、この発言はチャベス大統領を破滅させ、コロンビア国内問題を曖昧にさせるものだとし、右はコロンビア政府の正式な立場を示すものか明らかにするよう同国防大臣に求めた。またインターポールが発表予定の証拠品調査結果については、「メディアによる劇が続くだろう」と述べた。
(ロ)11日、チャベス大統領は対コロンビア関係について、経済関係の維持は構わないが、コロンビアとの良好な関係を再構築することは困難であり、ウリベ大統領との個人的関係を築く理由はないと述べ、ウリベ大統領を批判した。また、ウリベ大統領は対ベネズエラ戦争を引き起こしかねないとし、その場合はスリア州及びタチラ州から開始するだろうと述べ、国軍に対して警戒するよう指示した。
(ハ)14日、士官学校で講演を行ったチャベス大統領は、コロンビア領グアヒラが元々はベネズエラの領土であったとし、米軍が同地区に基地を設置することを受け容れられないと述べるとともに、仮に設置されるようなことがあれば、ベネズエラへの攻撃と理解すると発言した。併せて同大統領は、米軍基地がグアヒラに設置されるようなことがあれば、コロンビアとの間に古くからある領土問題が再燃する可能性もあるとした。
チャベス大統領の今次発言は、エクアドルと米国間の協定が来年にも失効し、エクアドル領マンタにある米軍基地のグアヒラへの移転をウリベ大統領が容認するとの憶測が流れたことによるもの。12日付のコロンビア日刊紙によるインタビューで、ブラウンフィールド駐コロンビア米国大使は、米国政府が右移転を否定しない旨発言したが、14日、サントス・コロンビア国防相は、基地移転を否定している。
(ニ)15日、チャベス大統領による上記発言に対し、アラウッホ・コロンビア外相は、両国間の領土は条約により完全に確定されており、グアヒラにおけるコロンビアの主権は議論の余地がないと応じた。
(ホ)15日、インターポールは調査を実施したコンピューターがFARCの所持品であり、またコロンビア政府が右内容を改竄、消去、または追記した証拠はないことを確認した。ノブレ・インターポール事務総長は今回の報告書は公のものであるが、右を公開するか否かはコロンビア政府の判断であるとした。
同日、チャベス大統領は3時間に及ぶ記者会見を開催し、この中で1時間半にわたり、インターポールによる報告書の発表を「ピエロの見せ物であり、時間を費やす価値はない」とし、コロンビア国民への尊重を欠くものだと批判した。
また対コロンビア関係については、ウリベ大統領がリオ・グループ首脳会談においてエクアドルとの間で達した合意を踏みにじっているとして非難し、対コロンビア関係について外交及び経済両面から再度見直す必要があり、コロンビア企業に対して外貨割り当てを行わない可能性に言及した。
(2)対チリ関係
(イ)16日、チリ外務省は、「アルトゥロ・エレラ・チリ警察長官が、1973年のクーデター以降、ピノチェット政権反対派に対する人権侵害に加担していた」とのチャベス大統領発言に対し、ウルバネハ駐チリ・ベネズエラ大使を呼び抗議文書を提出した。
ウルバネハ大使は、バチェレ大統領の勅命を受けたマキエイラ・チリ外務省局長代理より上記チャベス大統領発言が「事実無根」であるとの抗議文書を受領した。チリでの報道によると、バチェレ大統領は今次チャベス大統領発言に強い不快感を示した。
(ロ)22日、フォックスレイ・チリ外相は、本件につきベネズエラと和解する旨発言した。同外相によると、ベネズエラ政府より「チャベス大統領発言が事実とは異なる」ことを認識する旨の連絡があると同時に、本件に関する和解の要請を受けた。
(3)対ペルー関係
(イ)16日、ペルーで開催された第4回EU中南米カリブ首脳会議に出席したチャベス大統領は、MRTAをテロ組織に位置づけるようEUに対して要請するペルー政府を「大袈裟」であると評した(欧州議会は4月25日、MRTAをテロ組織リストに記載するようにとのガルシア大統領の要請を棄却している)。
またMRTAとのつながりが指摘されているALBA事務所に対する資金援助を否定するとともに、根拠の無いスキャンダルであると評した。チャベス大統領にとって、1996年に起きたMRTAによる日本大使公邸占拠事件は過去の出来事である。
(ロ)これに対し、ガルシア・ベラウンデ・ペルー外相はPeru
21紙に対し、チャベス大統領の上記発言を「誤った見解」であると拒絶するとともに、このような見解に耳を貸すべきでないと訴えた。同外相は、MRTAの脅威に直面したことのないチャベス大統領及びベネズエラが、他国の内政に干渉するべきではないと発言したフローレス・アラオス国防相に賛同した。
(4)対ボリビア関係
(イ)22日、モラレス大統領は、ブラジルで開催されるUNASUR首脳会合に向かう途上、ベネズエラに立ち寄り、大統領府に於いてチャベス大統領と会談した。右会談では、両首脳間で二国間の軍事協力に関する了解覚書が署名され、同席した両国国防大臣もこれに署名した。
(ロ)チャベス大統領は、今次合意に含まれる技術・軍事交流には、訓練、人材育成、ロジスティックといった分野が含まれるほか、ボリビアにおける海軍学校創設に対し、ベネズエラから助言を行うことも含まれていると述べた。
(ハ)これに対してモラレス大統領は、ボリビアが独自の軍事教義の確立を決定し、国軍が知能・技術両面における準備を必要とする中で、ベネズエラとの軍事協力は重要であることを強調した。なお、同大統領はベネズエラ来訪前にキューバを訪問し、フィデル・カストロ前国家評議会議長に会ったことを明らかにし、カストロ前議長は「痩せてはいたが、いつものように聡明」であり、チャベス大統領によろしく言っていたと述べた。また、UNASUR首脳会合については、欠席が見込まれるペルー及びウルグアイ両国首脳に対し、議長国として出席を呼びかけた。
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