1.対ラ米諸国関係
(1)対コロンビア関係
(イ)第38回OAS総会出席のため、コロンビアを訪問中のマドゥーロ外相は、2日、アラウッホ・コロンビア外相と二国間会談を実施した。マドゥーロ外相は会談内容について、両国は米州で行われているプロセス及び二国間政策について異なるビジョンを有しているが、両外相はコミュニケーションの維持及び恒常的対話の必要性を認識した、と述べた。またベネズエラ政府として、周知のテーマに関する(反ベネズエラの)キャンペーンが止み、尊重及びコミュニケーションが再開することを望んでいることを伝えたと述べた。
他方、アラウッホ外相は、会談では外交摩擦により冷却化していた、安全保障や通商といった重要な二国間テーマについて協議したと述べた。また、マドゥーロ外相同様、アラウカ県で発生した件のように両国間に相違があった場合に、両国間のコミュニケーションを維持しておくことの重要性を強調したが、二国間首脳会談実施の可能性については否定した。
(ロ)3日、第38回OAS総会に出席したマドゥーロ外相は、総会での演説に先立ち、1日、FARCはベネズエラにサンクチュアリーを求めており、コロンビア近隣諸国に対し、自国にFARCが逃げ込むことを避けるよう求めたネグロポンテ米国務副長官の発言に対し、同副長官を「犯罪手引書を持った小役人」であり、コロンビア近隣諸国とFARCの繋がりを指摘することによりラ米を分断させようとしていると批判した。
(ハ)8日、チャベス大統領は、FARCに無条件で全人質を解放するよう求めた。また、ゲリラ活動は現在のラ米においては既に過去のものとなり、時代の流れではないとし、右をFARCにも知らせるべきであると述べた。コロンビア和平合意については、アルゼンチン、スペイン、ポルトガル、フランス、エクアドル及びバチカンの協力を確信していると述べた。なお、同大統領は右をFARCに求める理由の一つとして、米国がベネズエラを脅かすため、FARCを言い訳として利用していることを挙げた。
チャベス大統領の発言に対し、オルギン・コロンビア内務大臣は、チャベス大統領はゲリラの擁護者であり、今次発言を行ったことは驚きであるが、右がFARC側に伝わることを期待すると述べた。また、アラウッホ外相は、今次チャベス大統領提案は、コロンビア政府が主張してきた立場と一致するものであると述べた。
(2)チャベス大統領のキューバ訪問
(イ)16日よりキューバを訪問中のチャベス大統領は、フィデル・カストロ前国家評議会議長及びラウル現議長と会談し、両国協力や両国革命記念式典(キューバ革命50周年、ボリーバル革命10周年)の実施につき協議した。
空港でラヘ・キューバ国家評議会副議長及びペレス・ロケ同国外相の出迎えを受けたチャベス大統領は、政治、経済、社会、エネルギーの諸分野で両国関係が今後も停滞することなく進展すると発言した。
(ロ)チャベス大統領は、フィデル・カストロ前国家評議会議長について、「元気そのものである(vivito y coleando)」と述べるとともに、思索し、記述しながら、キューバ及びラ米にとって重要な戦略を練っていると発言した。
(3)対エクアドル関係
(イ)13日、エクアドル外務省は同国政府がALBAに加盟しないとの決定を発表した。同政府はコミュニケの中で、地域統合プロセスを補完しようとする同イニシアティブに引き続き注目し、ALBA及び南米諸国連合(UNASUR)や米州機構(OAS)との協力メカニズムのために協力する用意があると示している。
(ロ)右決定について14日、コレア大統領は、現時点ではALBAに加盟しないとの決定であるが、同構想の目的、活動等が強化されるのを待つものであり、将来的な加盟を排除するものではない、として今回の決定の再考に可能性を残した。
(ハ)昨年8月の段階では、コレア大統領は、ベネズエラのアンデス共同体(CAN)復帰を自国のALBA加盟の条件としていた。今回の決定については、アナリストの間で、対米関係の強化に向け、エクアドル政府がチャベス大統領から距離を置こうとするものであるとの見方もなされている。
(4)対エルサルバドル関係
(イ)FARCとのつながりや武器売買の疑いが指摘されている、FMLNの幹部「ラミロ・バスケス」ことホセ・ルイス・メリノ氏率いるFMLN所属市長等の代表団が、15日にPDVSAの専用機でベネズエラを訪問し、PDVSA幹部と会談した。
(ロ)23日、サカ・エルサルバドル大統領は、FMLNはベネズエラと直接的な関係を有していると述べ、右専用機についても、ベネズエラ政府が送ったものであると発言した。
ただ、エルサルバドル外務省は、ベネズエラ政府に対する抗議は行っていない。
(5)対パラグアイ関係
(イ)18日、ルゴ・パラグアイ次期大統領はベネズエラを訪問し、大統領府でチャベス大統領と会談した。チャベス大統領はルゴ大統領を「国民の神父であり、貧者の大統領」と評したのに対し、ルゴ大統領は今回の訪問目的を両国友愛関係の強化であると述べた。
(ロ)翌19日、ルゴ大統領はチャベス大統領とともに地域住民委員会への資金供与式に出席した。この中でルゴ大統領は、ベネズエラ革命は未完であり、ベネズエラ国民の挑戦はこの革命を最後まで成就することだと述べた。他方、チャベス大統領は、ベネズエラ政府としてルゴ政権に協力する用意があるとし、対パラグアイ原油輸出を増加する考えであると述べたが、量及び時期は明らかにしなかった。また、16日に会談したフィデル・カストロ前国家評議会議長から託されたとして、ルゴ大統領及びパラグアイ国民に対する挨拶を伝えた。
(ハ)同日、ルゴ大統領は強固な反政府の立場で知られるバルタサル・ポーラス・メリダ市大司教(ラ米司教会議(CELAM)副議長)と会見した。会見内容は明らかにされず、ポーラス大司教は大統領選出に祝意を表明し、CELAM副議長としてラ米地域統合に注目している旨発言するに留まった。
(6)対ブラジル関係
(イ)27日、チャベス大統領は、ベネズエラを訪問したルーラ・ブラジル大統領と会談し、エネルギー、食糧、科学技術、環境、国境問題等に関する21の合意文書に署名した。中でも、両国間国境地域での電力接続に関する合意が注目されるものであり、ベネズエラからブラジル北部への電力供給が今後検討される。また食糧供給に関しては、ブラジルが2万トンの鶏肉、1万2千トンの大豆油、1万2千トンのモルタデッラ・ソーセージを輸出する。
(ロ)チャベス大統領は、両国関係が歴史上かつて無かったほどに良好であると発言した。ルーラ大統領も、両国関係に不信感は一切存在せず、国家関係のみならず、企業レベルにおいても両国の統合が可能であると発言した。
ルーラ大統領は、南米防衛評議会(Cosejo de
Defensa Sudamericano)結成についても楽観的であると発言した。一方、チャベス大統領は、ベネズエラのメルコスール加盟について、加盟国議会の承認が終了していないものの、既に一員になったかのように感じていると述べた。
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