1.対中南米諸国関係
(1)対コロンビア関係
(イ)7月31日、ベネズエラ政府は、同月23日にアマソナス州に潜伏しているところを国家警備軍により拘束されたクルマ・オルティスFARC幹部をコロンビアへ送還した旨発表した。今次送還はコロンビア治安当局の要請に基づくもので、同人には反逆罪等の理由により昨年2月14日より逮捕命令が出されていた。但し、同氏がFARC内で財務及び国境問題を担当する幹部である「ギジェルモ」と同一人物であるかについては確認されていない。
(ロ)エル・アイサミ当国内務司法次官(当時)は、ベネズエラ政府とコロンビア政府との関係を悪化させるために、ベネズエラ側が同FARC幹部を匿っているかのような報道がなされていたと述べるとともに、ベネズエラ政府は全ての国内・国際法に準拠した行動をとっており、何ら隠し立てすることはないと強調した。
(2)対アルゼンチン、ブラジル関係
(イ)4日、ブエノスアイレスにおいて、チャベス大統領は、ルーラ大統領及びフェルナンデス大統領と三ヶ国首脳会談を行った。右会談において、チャベス大統領は、三ヶ国は、食糧、産業、エネルギー及び金融部門における潜在能力の発展のために共同して対処している「南米の中軸」であり、関係を強化していくことが望ましいと述べ、三ヶ国間の同盟関係を強化するため、南米ガスパイプライン構想の再開及び域内鉄道建設構想を提案した。
(ロ)三ヶ国首脳は、南米諸国連合についても議論したほか、9月6日にブラジル・ペルナンブーコにおいて、エネルギー及び肥料をテーマに再び首脳会談を開催することで合意した。
(3)対アルゼンチン関係
(イ)チャベス大統領は、4日、アルゼンチンを訪問し、ベネズエラが約1週間前にアルゼンチン国債10億ドルを購入したことを明らかにした。ベネズエラは、アルゼンチンに対する最大の資金提供国の一つであるが、2005年に債務のリストラを完了した後は国際市場で起債は行っていない。
(ロ)また、同大統領は、製鉄会社Sidorの国有化のためにTechintグループに支払う金額に関して友好的な合意にいたる自信を示しつつ、Sidorがベネズエラ政府に売却する株式譲渡対価について最終的な調整が必要であり、価格は同社を監査して決定されると述べた。
(ハ)更にチャベス大統領は、国立産業技術院(アルゼンチン)
と軽工業貿易省(ベネズエラ)間の協力協定に調印した後、年末までにアルゼンチンと2国間基金を設立する可能性がある旨述べ、アルゼンチンの技術によりベネズエラにおいて49の工場を設立する可能性に言及した。
(ニ)石油分野では、チャベス大統領及びフェルナンデス大統領は、製油所及び原油・石油製品の備蓄・輸送設備の建設に関する覚書に調印した。製油所の生産能力は8万〜10万バレル/日とされる。
更に、チャベス大統領がアルゼンチンに提案したLNG気化施設の技術概念設計(費用6億ドル)の開始が発表された他、食料分野で、肉、穀物、油料種子、果物、野菜の生産について合意がなされ、また建設、エレクトロニクス、情報技術、自動車、プラスチック、金属、機器、繊維等の広範囲に亘る分野で契約が締結された。
(4)対ボリビア関係
(イ)5日、チャベス大統領は、フェルナンデス大統領とともに、ボリビア・タリハ市を訪問し、モラレス大統領との三カ国首脳会談を予定していたが、治安上の理由により右訪問を中止した。同大統領はその理由を、タリハ市において、両国の先遣隊及びベネズエラのメディア関係者が襲撃に遭ったこととした。三ヶ国首脳は、右会談にて、タリハ市における石油精製プラント建設に関する合意書に署名する予定であった。
(ロ)チャベス大統領は、10日にボリビアで実施予定の大統領罷免投票について、すべての世論調査がモラレス大統領の勝利を示していると述べ、野党側が右結果を受け入れることを望むと述べた。
(ハ)10日、当国外務省は同日ボリビアで実施された不信任国民投票の結果について、以下のとおりモラレス大統領の勝利を祝うコミュニケを発出した。
「チャベス大統領はベネズエラ国民とともに、今日のボリビア国民及びモラレス大統領の勝利を祝する。チャベス大統領はモラレス大統領に祝意を表明するとともに、ボリビア政府の推進する革命へ協力を継続する用意があることを伝えた。今日、モラレス大統領による国家解放プロセスにおいて先人の改革の力が再生し、多様性の容認や新政治・経済・社会モデルの模索に基づいた新正義秩序の確立により、ボリビアは再建の時を迎えている。ボリビア国民の意思が反映された今次投票により、真実が帝国の運動に勝ったのである。」
(5)対パラグアイ関係
(イ)15日、チャベス大統領は、パラグアイを訪問し、同国のルゴ大統領の就任式に出席した。同式典でチャベス大統領は、「ルゴ大統領とともに、解放の神学がよみがえる。」と述べ、ルゴ大統領が掲げる改革政策を称えた。なお同日、チャベス大統領は就任式出席のために同国を訪れていたモラレス・ボリビア大統領及びコレア・エクアドル大統領と会談した。
(ロ)16日、チャベス大統領はルゴ大統領とサン・ペドロ県に於いて会談し、エネルギー安全保障条約、協力枠組合意、食糧の主権及び安全に関する協力プログラム合意等、産業、エネルギー、教育及び農業に関する12の合意書に署名した。右会談の中で、チャベス大統領は、「パラグアイが国民、産業及び農業の発展のために必要とするすべての石油を供給する用意がある」と述べた。右合意により、ベネズエラからパラグアイへの1日あたりの石油供給量は、現在の18,600バレルから25,000バレルまで増加する見込みである。また、パラグアイからベネズエラへの輸出品目の関税引き下げ、及びベネズエラからの投資によるパラグアイにおける肥料、大豆、農業機械の生産工場建設の可能性についても言及した。
(6)対コスタリカ関係
(イ)11日、コスタリカのペトロカリブ加盟に向けて、同国代表団とPDVSA代表が初の会合をコスタリカで開催した。コスタリカ側からはドブレス環境エネルギー大臣、レオン・デサンティ石油精製公社総裁が、PDVSA側からはルイス・リバス局長が出席した。
(ロ)ドブレス大臣は、今次会合が財政状況に関する技術的なものであったと述べるとともに、次回9月にカラカスで開催予定の会合ではより具体的な提案事項が提出されるとの見方を示した。また12月に開催予定のペトロカリブ首脳会合迄の加盟を目指すと述べた。
(ハ)ドブレス大臣は詳細への言及を避けたものの、会合では同時にコスタリカにおける石油及び天然ガスの採掘や同国太平洋岸への石油備蓄ターミナル建設等といった両国の関心事項についても協議された。
(7)対ウルグアイ関係
(イ)17日、マドゥーロ外務大臣は、マンティージャ厚生・社会開発大臣、コントレラス軽工業・貿易大臣及びアリアス外務次官(ラテンアメリカ・カリブ担当)とともにウルグアイを訪問し、同国のフェルナンデス外務大臣との会談において、両国関係及び署名済みの合意の見直しが行われた。
(ロ)右会談において、ベネズエラ政府は、ウルグアイ製品のうち、主に農畜産物について、214品目の関税を直ちに引き下げることを決定し、これについてマドゥーロ外相は、右措置は、ウルグアイがベネズエラのメルコスール加盟を承認した最初の国であることへの謝礼であると説明した。
(ハ)この他、会合では、ウルグアイの国営企業Obras
Sanitarias社が製造する57の浄水設備をベネズエラが買い上げ、ウルグアイ側のコンサルティングにより同設備を一カ所ベネズエラに建設すること、ベネズエラにおける再生産バイオテクノロジー、畜産遺伝学及び技術者養成のためのセンター、及び遺伝子実験場の建設、インシュリン生産施設をベネズエラに、インシュリン研究機関をウルグアイに設立し、相互に協力して活動すること、及びウルグアイの国営電力会社UTEとベネズエラの同電力会社Cadafeの協力プロジェクト拡大が合意された。
(8)対ホンジュラス関係
25日、チャベス大統領は、ホンジュラスの米州ボリーバル代替構想(ALBA)加盟式典に参加するため、同国を訪問した。ホンジュラスの加盟により、ALBA加盟国は7カ国(ベネズエラ、キューバ、ボリビア、ニカラグア、ハイチ、ドミニカ国、ホンジュラス)に拡大した。
(9)対ペルー関係
(イ)30日、ラグーナ駐ペルー・ベネズエラ大使は、ペルーの「ラ・プリメラ」紙に対し、ペルー保健省の指示により、2ヶ月前から同国における「ミラクル・ミッション」を通じた眼科治療援助を中止したことを明らかにした。ベネズエラ政府は同国北部に患者移送のための輸送機を飛ばしていたが、7月、同国航空局の指示でタラポト市へのベネズエラ航空機の着陸が行えず、以来、実施が中断した状態となっている。
(ロ)ラグーナ大使は、ガルシア政権との理解ある関係を維持していると述べつつも、ペルー政府が、ベネズエラ政府が実施している医療援助と、同国内で「ALBA事務所」が行っている援助を混同していると述べた。同大使は、ベネズエラ政府とALBA事務所との関係を否定し、ALBA事務所とチャベス政権の関係を調査している同国国会委員会を批判した。
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