ホーム 緊急情報 ベネズエラ概観 二国間関係 大使館案内 文化班案内
リンク集 お知らせ ご意見・ご要望      

 

 政治月報

 (バックナンバー)

 経済月報

 (バックナンバー)

 文化情報

 ベネズエラ略史

 プロフィール

  ・国旗・紋章

  ベネズエラ・マンスリー政治情報(平成20年 9月)

 

     


   

政 治 概 況

1.内  政

(1)11日、チャベス大統領は、米国、国内反政府勢力及びメディアが関与している自身の暗殺計画があると指摘。これに対し反政府系メディア及び野党は、関与を否定すると共に、これを政府の選挙戦術及びアントニーニ事件(ベネズエラ人起業家が現金約80万ドルをアルゼンチンに持ち込もうとした事件)から注意をそらすためのものだと反論した。

(2)13日、大統領授権法を通じて成立したボリーバル国軍法に基づく「統合防衛地域」が発足。30日には同じく大統領授権法を通じて成立した「行政法」の内容を規定する「国土整理・管理法案」が国会の第一審議を通過した。

(3)18日、ベネズエラ政府は政府を批判する内容の報告書を提出した、ビバンコNGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」理事を国外追放した。

2.外  交

(1)チャベス大統領は、21日から27日にかけてキューバ、中国、ロシア、フランス、ポルトガルに外遊し、各国首脳と会談を行った。

(2)30日チャベス大統領はブラジルを訪問し、ルーラ大統領と二国間会談を実施。またモラレス・ボリビア大統領及びコレア・エクアドル大統領も交えた4者会談も実施された。

(3)11日、チャベス大統領は、米国政府のベネズエラ国民に対する敵意の表明及びボリビア政府及び同大統領に対する不安定化活動に鑑み、ダディ駐ベネズエラ米国大使に国外退去を命じた。

(4)10日、ロシア空軍の爆撃機2機がベネズエラに着陸し、公海上で飛行訓練を行った。
 

             

内 政

1.08年地方選挙

(1)チャベス大統領の暗殺計画

(イ)10日、シルバ・ベネズエラ統一社会党(PSUV)カラボボ州知事候補は、国軍内で現役及び退役軍人がクーデター及び大統領暗殺を計画しているとする録音を公開した。

(ロ)11日、チャベス大統領はシルバ候補の指摘に関し、自身への暗殺計画があり、これには米帝国、国内反政府勢力及びメディアが関与していると述べ、国民及び国軍に対し、「革命の反撃」に向けて準備するよう命じた。同大統領は、02年とは状況が異なっており、当時のように対話を求めるつもりはないと述べた。

(ハ)これに対しラベル「グロボビシオン」局社長は、選挙が近づく度に大統領暗殺計画が指摘されるが、同罪で収監された者を一人も知らないと指摘し、オテロ「エル・ナシオナル」紙社主も、反政府計画への関与を否定し、チャベス大統領が「アントニーニ事件」に関して米国内で行われている審議で自身に不利な証言がなされることを隠そうとするものだと指摘した。他方、野党キリスト教社会党(COPEI)も、クーデター計画の指摘は政府が過去10年、選挙の度に行ってきたことであり、証拠が示されたことはないと指摘した。

(ニ)同日、国会はシルバPSUV候補の告発に関し、「クーデター及び大統領暗殺陰謀・組織調査特別委員会」を任命した。またフローレス国会議長は、本件にはラベル「グロボビシオン」テレビ局社長、オテロ「エル・ナシオナル」紙社主、「12月2日(2D)」運動(昨年12月国民投票を契機としてオテロ社主が主導して始められた運動)が関与しているとして非難し、またその背後には政党が関与していると述べた。

(2)世論調査

26日付エル・ナシオナル紙は、アルフレッド・ケラー社が実施した11月実施予定の地方選挙に関する第三四半期における世論調査結果を以下の通り報じた。

(イ)投票に行くか行かないか

      投票するつもりである 76%

      投票することはない  24%

(ロ)地方選挙では、与党候補及び野党側候補、どちらに投票するか(括弧内はそれぞれ本年第1回及び第2回目の調査結果)

      野党候補      38%(36%、37%)

      与党候補      34%(31%、36%)

      分からない/無回答 23%(26%、17%)

      良い方の候補     5%( 8%、11%)

(ハ)主要な州知事及び市長について、どちらが勝つと思うか(括弧内は前回の調査結果)

      与党候補      40%(41%)

      野党候補      36%(34%)

      分からない/無回答 24%(26%)

                  

 

       

2. 大統領授権法を巡る動き

(1)大統領授権法に関する意見

(イ)7日、チャベス大統領は自身のテレビ・ラジオ番組「アロー・プレシデンテ」において昨年12月の憲法改正国民投票の結果に言及し、憲法自体へ盛り込むことが否決されたことと、新たな法律を制定して実施することは別物であるとして、憲法改正案の内容を法律を通じて実施することも可能であると述べ、大統領授権法を通じて成立した26法に対する反政府側の批判に答えた。

(ロ)10日、ポーラス・ベネズエラ司教会議(CEV)メディア委員会委員長は、大統領授権法を通じて成立した法律が憲法違反であるとのCEVの立場を表明した。同司教は、チャベス政権が法律に無知であり、(昨年12月の国民投票で)否決されたのは憲法改正案のみであって、これらの法律が否決されたわけではないと正当化していることを批判した。また法律の内容については、国家及び政府の権力・統制を強めて99年憲法を終わらせようとするもので、国民の安全や平穏を弱めるものだと述べた。

(2)ボリーバル国軍新法の実施

(イ)13日、チャベス大統領は、中央地域(バルガス、カラカス首都区、ミランダ、アラグア、カラボボ、ヤラクイ各州)、西部地域(ファルコン、ララ、トゥルヒージョ、メリダ、タチラ、スリア各州)、ジャノス地域(アプーレ、ポルトゥゲサ、バリーナス、コヘーデス、グアリコ各州)、東部地域(デルタ・アマクーロ、モナガス、スクレ、アンソアテギ、ヌエバ・エスパルタ各州)、ガイアナ地域(ボリーバル、アマソナス各州)各地域に担当の司令官を任命し、7月31日に大統領授権法を通じて成立したボリーバル国軍法に基づく「統合防衛地域」を発足させた。

(ロ)新法はこれらの地域を「戦略地政学的要素を持つ空間であり、大統領が国家防衛オペレーションを計画実行するにあたり、国家防衛戦略概念に基づいて設置する」と定めており、これらの地域は大統領の直接指揮下にある「作戦戦略コマンド」の下におかれ、4軍及び民兵は各地域のコマンドに従い、国防大臣は国軍の行政部分のみを扱うこととなる。

(ハ)これについてサラサル元国防大臣は、各師団の司令官は、その長に従属する他に、各戦略地域の司令官にも従属する形になる点を指摘した上で、軍内の縦の指揮系統に反するために国軍内で混乱がおきるとして懸念を表明し、国軍の指揮に関して大統領に責任を負うのは国防大臣であるべきだとして、国防省が単なる行政機関となる点を批判している。

(3)国土整理・管理法案の国会第一審議通過

(イ)30日、「国土整理・管理法案」が国会の第一審議を通過した。同法案は、先般大統領授権法にもとづいて成立した「行政法」の内容を規定するもので、その目的は、社会主義的領域の建設にあると定められ、そのために、国土発展軸、機能的地域、都市ー農村システム、政治・行政国土管理区域、及び特別行政エリアを創設し、(州、市とは無関係に)国土を区分・再編するものである。右区分は、現在の州・市の境界と一致する可能性もある。

(ロ)また同法案は、右区分における、大統領が任命する「地域長官(Autoridad regional)」の14の権限を定めており、中でも注目されるのは、「国土の整理・発展に関する政策を実施するための、中央行政府機構とその他の公共機構の活動の調整」である。右により、州及び市の行政運営及びその機構は、機能上、地方長官が定めるガイドラインに従うことになり、国家目標達成のために地域的及び国家的に重要と判断されたプラン、プロジェクト、活動において積極的に協力しなければならない。

(ハ)さらに、同法案は、公共利用・社会利益のための国土の整理・管理についても定めており、行政府は、国土整理計画において、特別行政エリア及び公共利用のために接収されるべき私有地に関する国土使用のルール及び利用計画を規定することになるが、関係者は、私有地が影響を受けた場合は、適当な補償がなされるとしている。また、公共利用のための国土使用の例としては、農業、牧畜、産業、都市発展、観光、国立公園等があるとみられている。国土整理・管理においては大統領が優越権限を有し、環境・天然資源省が担当官庁となる。

  

 

 

 

3. 「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」関係者の国外追放

(1)18日、外務省はコミュニケを発出し、ビバンコ(チリ国籍)NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」理事について、「同氏が公表した内容を分析した結果、民主主義の機関を攻撃し、内政に干渉し、ベネズエラ憲法及び国内法を侵害した」として、同行者のウィキンソン氏(米国籍)とともに国外追放の決定を行ったと発表した。

(2)同日、ビバンコHRWラ米担当理事は、カラカス市内に於いてベネズエラに関する報告書「チャベスの10年:政治的不寛容及びベネズエラにおける人権進展のための失われた機会」と題する報告書を発表し、政府が野党勢力を押さえようとする過程に於いて、民主的機関及び人権保障を脆弱化させたと批判を行っていた。

 

   

外 交

     

1.対ラ米諸国外交

(1)対ボリビア関係

(イ)11日、チャベス大統領はボリビア情勢に言及し、モラレス大統領が倒されたり暗殺された場合、ボリビアにおけるいかなる武力行為をも援助できるとの青信号が出されたと理解する、と述べる一方で米国に対しては、ラ米自身の歴史及び世界を創らせてほしいと要請した。

(ロ)12日、上記発言に対しトリゴ・ボリビア国軍司令官は、チャベス大統領及び国際社会に対し、いかなる外部からの介入も拒否すると述べ、外国軍がボリビア領土に踏み入ることは認めないとした。また、サンミゲル同国国防相も、トリゴ司令官の発言を支持し、ボリビアは外国の介入を必要しないと発言した。

(ハ)14日、これに対しチャベス大統領は、自身のテレビ・ラジオ番組「アロー・プレシデンテ」内において同司令官の発言に応え、ボリビアの内政に干渉するつもりはないが、モラレス大統領に何か起これば、腕組みして見ているわけにはいかないとの立場を繰り返した。またボリビア国軍に対しては、憲法を尊重し政府を擁護するよう呼びかけた。

(二)15日、南米諸国連合(UNASUR)加盟国の内、8カ国首脳が出席した緊急首脳会合はモラレス大統領支持の表明を行い、ボリビア内の領土分裂のいかなる動きにも反対する旨宣言した。会合の成果についてチャベス大統領は、南米各国首脳が一致してボリビア政府を支持することで、南米諸国が相互理解及び共通の解決策の道を模索することが可能であることが表明できたと評価した。

(ホ)16日、記者会見においてチャベス大統領は、UNASUR会合結果についてボリビアにおけるクーデターを不発に終わらせたと評価した。また、ボリビア国軍に対して国民及び大統領との取り決めを守るよう呼びかけた。右会見にはモラレス大統領が電話で参加し、全セクターとの対話が開かれていると述べた。

(2)対チリ関係

17日、マドゥーロ外相はフォックスレイ外相がUNASUR首脳会合におけるチャベス大統領の出席を批判(注:同外相はチリ国内テレビにおいて、チャベス大統領が最終宣言文で米国を非難するよう主張したことから、会合が失敗に終わることを懸念したと発言していた。)したことについて書簡を発出し、チャベス大統領が友好国であるチリ政府関係者の敵意や個人的不快表明の対象となることは理解しがたいと述べ、チリ政府による説明は求めないものの、フォックスレイ外相に対し、訂正及び謝罪を行うよう求めた。

(3)対ペルー関係

1日、ラグーナ駐ペルー・ベネズエラ大使は7月から同国における「ミラクル・ミッション」を通じた眼科治療援助を中止したことを明らかにし、その理由を同月、同国北部に患者移送のために向かったベネズエラ輸送機が同国航空局の指示でタラポト市への着陸が行えなかったためと発表した。右に対し、ガルシア・ベラウンデ・ペルー外務大臣は、ペルー国内においてベネズエラとの協力に対する警戒心が増幅していると述べ、右ミッション中止の理由についてはガルシア・ペルー大統領が透明性を高め、ベネズエラとの協力に対する警戒心を軽減するためにペルー国内における手術の実施を提案したが、右に対するベネズエラ側からの返答がなかったためであると説明した。

(4)対ブラジル関係

30日、チャベス大統領はブラジルを訪問し、ルーラ大統領と会談した。同会談は6月27日にベネズエラで実施された両国首脳会談に続く、3ヶ月ごとの定期会談であり、科学技術、石油、農業等に関する7つの合意文書に署名した。中でも特筆すべきは、ブラジルからベネズエラに対する大豆栽培技術支援等、家族経営農業向上技術協力、ブラジルの建設会社Andrade Gutierrez社とベネズエラ国有製鉄会社による製鉄所共同建設、国民住宅への融資促進、両国間のフライト増便等である。

(5)対キューバ関係

(イ)21日、チャベス大統領はハバナを訪問し、ラウル・カストロ国家評議会議長の出迎えを受けた。同大統領のキューバ訪問は今年3回目である。チャベス大統領は、フィデル・カストロ前国家評議会議長とも会談を行ったとみられている。

(ロ)27日、チャベス大統領はポルトガルからの帰途にキューバに立ち寄り、ラウル・カストロ国家評議会議長及びフィデル・カストロ同前議長と会談を行い、今次外遊(中国、ロシア、フランス、ポルトガル)についての報告を行った。

(6)対ハイチ関係

2日、チャベス大統領は南アフリカを訪問した際に、04年以来同国に亡命中のアリスティッド・ハイチ前大統領と会談した。右会談の詳細は発表されていない。

(7)多国間関係

30日、チャベス大統領はブラジル訪問の際、ルーラ・ブラジル大統領、モラレス・ボリビア大統領及びコレア・エクアドル大統領を交えた4者会談行い、UNASURについて協議するとともに、4カ国間の同盟制定協定を含む、各種合意文書に署名した。

         

              

2.対米関係

(1)ダディ駐ベネズエラ米国大使に対するペルソナ・ノン・グラータの通告

(イ)11日、チャベス大統領はダディー駐ベネズエラ米国大使に対し、72時間以内に国外退出するよう要求し、現時点から米国との外交関係を再検討することを表明した。右は、米国が駐米ボリビア大使に国外退去を命じたことに応えるものと見られ、チャベス大統領は米国の措置について批判していた。また大統領はアルバレス駐米ベネズエラ大使に対し、本国への召還命令を発出し、米国に新政府が誕生した際に再度大使を派遣すると述べた。

(ロ)12日、外務省はコミュニケにおいて、ベネズエラ政府は米国政府のベネズエラ国民に対する敵意の表明及びボリビア政府及び大統領に対する不安定化活動をふまえ、米国大使にペルソナ・ノン・グラータを通告するとし、我々の国、同国民及び兄弟国ボリビアへの尊重を保証するため、米国との関係を徹底的に見直すことを決定したと発表した。

(ハ)同日、マコーマック米国務省報道官は、チャベス大統領及びモラレス大統領による米国大使国外退去命令の発出を残念なものであるとし、右は国内問題に対処するにあたっての両大統領の脆弱さ及び失望を反映するものだと述べた。また、米国政府も右措置に対抗し、アルバレス駐米ベネズエラ大使に即座の国外退去を命じると述べた。

(二)18日付当地報道で、本国に召還されたアルバレス駐米ベネズエラ大使は、米国から国外退去を命じられる前に出国したとし、ベネズエラ政府の大使国外退去決定は外交の枠組みで行われたものであり、厳しい決定で政治的関係を縮小するものである一方で、商業及び文化関係は完全に保持されるものであると述べた。

(2)米国外国資産管理局によるチャシン前内務司法大臣等の資産凍結

(イ)13日付当地主要紙は、米国外国資産管理局(OFAC)が、チャシン前内務司法大臣、カルバハル軍事諜報局(DGIM)長官及びランヘル内務警察(DISIP)長官をコロンビア革命軍(FARC)との関係疑惑により資産凍結対象国・個人リストに加えたことを発表したと報じた。当面、右3名は米国内資産を凍結され、また米国市民が該当者と商取引等を行うことが禁止されることになる。

(ロ)14日、チャベス大統領はこの措置に対し「アロー・プレシデンテ」番組内に於いて、卑劣な行為であると非難し、ダディー米国大使の国外退去決定に対する報復措置であると断言した。

(3)「アントニーニ事件」の審議開始

(イ)9日、マイアミに於いて、ベネズエラ人起業家アントニーニ氏が現金約80万ドルをアルゼンチンに持ち込もうとした事件に関し、米国内でベネズエラ政府のエージェントとして現金の出所及び目的を隠蔽すべく活動したとされるドゥラン氏の容疑につき審議が開始された。本件への関与を認めているマイオニカ氏は証言に於いて、チャベス大統領も本件を承知しており、大統領自身がランヘル内務司法省・内務警察(DISIP)長官を本件解決のために指名したと述べた。

(ロ)マルビヒル米国検事は、ランヘルDISIP長官及びアイサミ内務司法次官(当時。現同省大臣)が、ドゥラン容疑者に対し、アントニーニ氏のアルゼンチンにおける弁護人を手配するよう要請したと述べ、アントニーニ氏は事件発生12日後に既にFBIとコンタクトをとっており、FBIの助言に基づき、現金所持を正当化する書類及び200万ドルを要求する書面をチャベス大統領宛に送付しており、審議では右書面をスペイン語に翻訳したFBI翻訳官も証言した。関与を指摘されたエル・アイサミ現内務司法大臣は、右指摘は馬鹿げたものであり、応答するつもりはないと述べた。

(ハ)16日、チャベス大統領は大統領府での記者会見の中で、アントニーニ氏について面識はないとして、右資金の源がベネズエラ石油公社(PDVSA)であったとの説を否定し、本件は米国政府による創作であると述べた。

(4)ベネズエラに対する各米大統領候補の発言

(イ)4日、マケイン共和党大統領候補の中南米ブレーンであり、レーガン及びブッシュ父政権時代の駐ベネズエラ米国大使であるライヒ氏が、マケイン候補の対中南米政策及びライヒ氏のチャベス大統領への見方について語り、マケイン候補は中南米に「注意」は払うだろうが、優先地域にはならないと発言した。チャベス大統領について同氏は、「米国民及び米国大統領を侮辱し続け、我々の利益に反する行動をとる米国の敵である。彼はベネズエラ経済と民主主義機構を破壊しており、彼が唱える21世紀の社会主義は、1930年代にヒトラーやムッソリーニが領土拡張主義者になる前に行っていたことと同じである。我々は過激主義政府と協力したくはない。チャベスは、米国大統領選挙後に対米政策を大きく変えなければならないが、それに関して私は楽観的ではない。」と述べた。また、02年にベネズエラで発生したクーデター未遂に同氏が関与したとの疑いに関しては否定した。

(ロ)9月第1週よりマケイン共和党候補は、フロリダ州において新たなテレビCMの放送を開始し、その中でオバマ候補のチャベス大統領への対応を批判している。同CMは「オバマは誰と話がしたいのか?」とのタイトルの下、11日にチャベス大統領がダディ前駐ベネズエラ米国大使にペルソナ・ノングラータを通告した演説や、米国批判発言の映像を流し、最後に「我々はチャベスと対話をするべきだと思うか?」とのナレーションで締めくくり、任期1年目にチャベス大統領と会談を行うと発言したオバマ候補を批判する内容となっている。同ビデオはスペイン語で放送されており、主にフロリダ州に多く在住するラティーノへ向けたものと見られる。これに対してベネズエラ政府は、20日、同CMはチャベス大統領のイメージを悪魔化して恐怖を煽ることを意図しており、根拠のない攻撃である、として非難した。

(ハ)22日、オバマ民主党候補は、ラジオ局が行ったインタビューにおいて、「チャベス大統領は地域において反米感情を悪用している。これは、米国がイラク戦争に囚われてラ米に十分な注意を払ってこなかったために、チャベス大統領のような人物がその空白を埋めることを許してしまったのである。大統領に選ばれたら、ブッシュ政権よりもラ米に対するアテンションをより高めるつもりである。重要なのは、チャベスに対して過剰反応するのではなく、ラ米が必要としているものを理解し、ラ米諸国と敬意をもって対話を行うことである。」と述べた。

(二)19日及び22日チャベス大統領は、「(米国大統領候補者は)選挙キャンペーン中であり、チャベス批判は票になりうる。我々はこれらの根拠のない批判に忍耐と寛容をもって接しなければならない。彼らに唯一望むのは我々への敬意である。私は候補者ではなく、大統領に就任した人と対話をする。」と述べた。

   

       

3.対欧州外交

(1)対フランス関係

26日、チャベス大統領はフランスを訪問し、サルコジ大統領と二国間関係及び世界金融危機について討議した。会談後チャベス大統領は、サルコジ大統領が提案する、12月の世界金融危機サミット開催に賛意を表明し、このサミットがG8のみにとどまらないよう望む、と述べた。また、米国政府による金融危機への対処について、米国は、それを発生させたのと同じ方法で対処しようとしている、と述べて、米国の対応を批判した。また、チャベス大統領は、フランスを含む今次外遊において、ベネズエラ政府が現在実施している経済モデル変革及び産業技術発展の実現に向けて、フランスのような「友好国」に対してエネルギー協力と引換に支援を要請したところ、サルコジ大統領の返事は非常にポジティブであった旨述べた。また同大統領は、両国の二国間関係を強化していくことで合意した旨述べ、フランスのTotal社及びPerenco社がベネズエラでガス開発を行っていることに言及した。

(2)対ポルトガル関係

27日、チャベス大統領はポルトガルを訪問し、ソクラテス首相と会談を行った。同大統領のポルトガル訪問は、この1年で3回目になる。右会談後に同大統領は、両国の新しい強固な関係を強調した。会談ではポルトガルが途上国の学生向けに提供している小型ノートパソコン及びポルトガルのLENA社からプレハブ住宅5万戸を買い付け(含む能力開発及び技術移転)及び、電気、天然ガスに関する共同プロジェクトなど合計20億ユーロ以上に上る約10の取り決めが合意された。

(3)対ロシア関係

(イ)10日、チャベス大統領は、ロシア空軍の爆撃機(Tu-160)2機がリベルタドール空軍基地(アラグア州)に着陸したとし、今後数日間、公海上で飛行訓練を行う予定であると発表した。また、ロシアとの戦略的協力及び同機の大西洋上の飛行により、米国第四艦隊の動きについて情報を受ける予定であると発言した。更に、数ヶ月中にロシア海軍艦隊も訪れる予定であることに再び言及しつつも冷戦を再燃させるつもりはないと述べた。本件につき、オルロベテス (Orlovets)駐ベネズエラ・ロシア大使は、ロシア側にはベネズエラに基地を建設する考えはないと述べ、11月にベネズエラ領海で実施予定の海軍合同演習についても、通常の演習であって第三国に対するものではなく、またポーランド及びチェコにおける米国のミサイル防衛システム建設との関係もないと述べた。ロシア軍報道官は同機に原子爆弾は搭載されておらず、15日、約6時間にわたり公海上を飛行したが、右は国際法規に則り、他国の領空を侵犯することはなかったと発表した。

(ロ)17日、カラカス市内でロシア・ベネズエラ・ハイレベル委員会が開催され、ロシア側からはセチン副首相が、同国企業関係者等を含む代表団を率いて出席した。ベネズエラ側から出席したカリサレス副大統領は、会合では産業、農業、技術及び軍事分野における二国間協力プログラムの見直しを行ったと述べ、ロシアとの関係については、多極的世界の推進及びベネズエラの発展にとっての代替模索の枠組みの中にあると述べた。また大統領府でチャベス大統領と会談したセチン副首相は、両国は信頼関係にあり、技術・軍事協力は今後も発展していくとし、特に両国はエネルギー、造船、自動車、文化及び教育分野に於いて一致すると発表した。

(ハ)25日及び26日、チャベス大統領はロシアを訪問し、プーチン首相及びメドベージェフ大統領と個別に会談を行った。チャベス大統領のロシア訪問は、01年以来7回目で、この3ヶ月以内で2回目になる。チャベス大統領は、世界の新たな地政学的ダイナミズムの出現や世界的な金融危機を前に両国の協力の必要性を訴えるとともに、グルジア紛争におけるロシアへの「精神的支持」を表明した。プーチン首相は「ラ米は、現在形成されつつある新たな多極世界の鎖の重要な一部を成すようになってきており、我々の経済・外交政策はこの地域により多くの注意を払うようになるだろう。」と述べると共に、両国間における原子力の平和利用に関する協力について検討することを発表した。また、両大統領及びプーチン首相は、11月に予定されているカリブ海のベネズエラ領海内における両国の共同軍事訓練に言及し、軍事協力の強化を訴えた。

(ニ)26日、ロシア国営天然ガス会社ガスプロムのミラー社長とPDVSA総裁であるラミレス・エネルギー・石油大臣は、両社のビジネスチャンス拡大のための覚書及び右を補完する協定作成に関する覚書に署名した。

    

 

       

4.対中国関係

(1)23日及び24日、チャベス大統領は中国を訪問し、胡錦涛国家主席、呉邦国全人代常務委員長、李克強副首相らと会談した。両国は合計26の合意に署名し、PDVSAとペトロチャイナとの間で燃料油の輸出契約が締結された他、PDVSA及びSinopecは、オリノコ・フニン第8鉱区における30万バレル/日の製油所建設に関する共同スタディー及びVLCCタンカー4隻の建設について合意した。また、両国は2年前に設立した共同基金の資金を60億ドルから120億ドルに増額する旨決定した。さらに、詳細は明らかにされていないものの、チャベス大統領はベネズエラが中国から訓練機及び偵察機を購入することを明らかにした。

(2)会談に先立ち、チャベス大統領は今次訪問について、「(国連総会を欠席するのは)ニューヨークに行くより北京に行く方が重要だからである。私はこの後ロシアに向かう。我々は、メドベージェフ、プーチン、胡錦涛そしてキューバとともに多極的世界を構築していく。」と述べたのに対し、中国外交部の姜瑜報道官は、「中国とベネズエラは国家と国家の通常の関係であり、イデオロギーに基づくものでもないし、第三国に立ち向かうものでもない。中国はベネズエラを含むラ米との関係を引き続き発展させていく。」と述べ、両国の対応の違いが見られた。

    

 

      

5.対南アフリカ関係

2日、チャベス大統領は南アフリカを訪問し、ムベキ大統領と会談し、南南協力の推進力となるための「戦略的協力」関係を開始することで合意した。また、エネルギー協力に関する各種合意に署名し、合意内容の詳細は公表されていないが、右合意にはPDVSAと南アフリカの石油公社Petrosaとの間の石油・ガスに関する諸合意やベネズエラがPetrosaに特恵価格で原油を販売することも含まれていると思料される。

    

 

    

ベネズエラ概観のトップへ