1. 08年地方選挙
(1)愛国同盟内の与党内対立
(イ)9日、チャベス大統領は、ポルトゥゲサ州におけるベネズエラ統一社会党(PSUV)選挙活動の場において、同党と共に与党間選挙協力「愛国同盟」を形成している、「皆の為の祖国(PPT)」及びベネズエラ共産党(PCV)が、PSUVへの統合を拒否していると批判した。また11日にも、PPT及びPCVが独自の州知事候補を擁立していることに触れ、両党幹部がチャベス大統領のリーダーシップを認めない以上、自身も彼らを認めないと述べ、両党を政治地図から抹消すべきであると批判した。
(ロ)10日、右大統領の批判に対し、ウスカテギPPT幹事長は、大統領は同党を愛国同盟から追い出す立場にはなく、統一政党結成の議論は既に終わっていると述べた。さらに12日、フィゲラPCV書記長は、同党を反革命的であるとした大統領発言を否定し、大統領の発言は単なる選挙用のものであるとした。また大統領が各党が独自候補を出すことを容認した7月7日の合意を無視していることは理解できないとして、PCVとしてはPSUVの16候補を支持するが、6州において独自候補を出す旨述べた。
(ハ)16日、PSUV政治局はチャベス大統領が同党候補の支持率が十分でないと見なされる、バリーナス、スクレ、カラボボ、スリア及びヌエバ・エスパルタ各州におけるPSUV候補の支持強化のために地方遊説を実施することを決定した。同大統領は前週にもポルトゥゲサ、トゥルヒージョ、グアリコ、スリア及びバリーナス各州を訪問し、同党の選挙支援活動を実施しており、特に右冒頭3州では、PPT及びPCVが独自に擁立している候補者に対して批判を集中させた。
(2)チャベス大統領の選挙支援活動
(イ)4日、チャベス大統領は、詳細には触れなかったものの、明年より地方振興計画「Plan
Padre」2009-2013を実施していくことを発表し、本計画は中央政府が実施している社会ミッションと地方権力を連帯させ、国家と地方政府が共同で実施するものであるとした。また5日には、本プログラム実施には革命派の知事が必要であり、「PSUVが選挙後コントロールする州のみで実施される」と述べた。
(ロ)15日チャベス大統領は、PSUVの選挙活動に専念するため、自身のテレビ・ラジオ番組「アロー・プレシデンテ」の放送を11月23日に実施される全国地方選挙終了まで一時停止するとし、再開は11月最終週もしくは12月第1週を予定していると発表した。公共の電波を用いたチャベス大統領の選挙活動に関しては、先月ディアス全国選挙評議会(CNE)委員(反政府系)が長を務める同政治参加及び資金調達委員会がチャベス大統領が公共の電波を使用して自身が党首を務めるPSUVへの勧誘を実施することは憲法及び選挙・政治参加基本法に違反しているとの声明を発出しており、また野党からも公共の電波を用いて選挙活動を実施することは違法であるとの批判があがっていた。これに対しララ前通信情報大臣(グアリコ州知事候補)は、候補者に対する支持を表明する大統領の表現の自由は制限されるべきではないと、反論していた。
(ハ)24日、チャベス大統領はスリア州にて行われたPSUV選挙キャンペーンに参加し、同州知事選挙でPSUVが敗れた場合、同州との関係及び同州における投資プロジェクトを見直し、軍事行動を含む「チャベス・プラン」を実行せざるを得ず、同プランは同党が敗れた全ての州及び市で実行されると述べた。
(3)与野党立候補者を巡る動き
(イ)カプリレス・バルータ市長に対する再審理請求
(a)20日、ミランダ州知事選に立候補しているカプリレス・バルータ市長(正義第一等(PJ))が首都区裁判所第11一審法廷より、02年のキューバ大使館包囲事件(注:同年クーデター時に、キューバ大使館がチャベス派官僚を匿っているのではないかとの噂を元に、反チャベス派民衆が同大使館を包囲、侵入し器物の破損等が行われた)への関与疑惑に関する再審理を請求され、出廷を命じられた。本件については既に06年12月に最高裁で同市長に対し全容疑無罪の判決が下されている。なお同日、同市長は出廷したものの、再審理を担当しているアポンテ裁判官が法廷に現れなかったために審理は実施されなかった。
(b)これに対し反政府派は、本件を世論調査で優勢である反政府派カプリレス市長の選挙活動に対する政治的迫害と捉えており、同市長は、同じくミランダ州知事候補のカベージョ現職知事(PSUV)を今次再審理請求に関与しているとして非難した。他方、17日、カベージョ知事は本件について、カプリレス市長が自身を被害者に仕立てるために計画したものであると批判し、再審理を行うとの同法廷決定を支持しない旨表明している。
(ロ)ロサレス・スリア州知事に対する逮捕要求
25日、チャベス大統領はスリア州にて、ロサレス同州知事(新時代党(UNT)、マラカイボ市長候補)が、同大統領の暗殺計画に関与しているとして、検察及び最高裁に同知事への捜査を開始するよう要求した。これに対し同知事は、一連の同大統領発言は、最近の同州知事選に関する世論調査において、与党側候補が野党側候補に遅れをとっていることで同大統領が「選挙における絶望」を感じていることに起因する、と反論した。
(ハ)スリア州における与野党間での汚職告発
(a)28日、ディ・マルティーノ・カラボボ市長(PSUV)は、内務司法省に対し、ロサレス知事を汚職の疑いで調査するよう申請した。同市長は、ロサレス知事がマラカイボ市において名義詐称等の違法手段で農場14軒及び家屋6軒を取得した他、2,500件に及ぶ未完了事業の資金を私的流用したと告発し、同知事が給与所得のみで右資産を所有するに至った事実は注目に値すると述べた。
(b)30日、ルシアン会計検査院長は、会計検査院はスリア州に関連する調査を行っており、ロサレス知事について告発された事実が確認されれば、同知事に対し給与停止、職務停止あるいは15年間の公務員資格停止といった行政制裁を課す可能性があると述べた。
また国会会計委員会も、ロサレス知事に対し汚職疑惑について喚問を行うことを決定し、オルテガ国会第一副議長は、CNEに対し同知事及びUNTの選挙運動資金の調査を行うよう要請した。
(c)29日及び30日、UNT党員複数名は内務司法省に対し、ディ・マルティーノ市長の汚職疑惑に関して告発を行った。党員等によれば、同市長は05年以降、マラカイボ市内の契約ゴミ収集会社を複数回にわたり変更することで同市に5,000万ボリーバルの違約金を発生させた他、建設会社に対する手数料支払いの制度化、市所有地の不正利用も行ってきた由である。告発に関わったモントーヤ元国会議員は、国会はロサレス知事に対する調査を開始したのに対し、バリーナス州でのチャベス大統領親族による不動産購入やアントニーニ事件については調査を行っていないとして、本件はスリア州選挙における敗北を前にした政治的迫害であると批判した。 |