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  ベネズエラ・マンスリー政治情報(平成20年 11月)

 

     


   

政 治 概 況 

1.内  政

(1)23日、統一地方選挙が実施され、開票の結果、知事選挙ではベネズエラ統一社会党(PSUV)が17州、野党が5州+カラカス首都区を獲得、市長選挙では、PSUVが263市、野党が48市、州議会議員選挙においてはPSUVが178議席、野党が53議席を獲得した。また投票率65.45%と高い国民参加を記録した。

(2)30日、チャベス大統領はPSUVに対して、大統領の無期限再選を可能にする憲法修正実現に向けて討議及び活動の開始を許可すると発表した。

2.外  交

(1)18日、グエン・ミン・チエット・ベトナム社会主義共和国国家主席が初の公式訪問。両国の関係強化を目的とした行動枠組み内における15の協力協定に署名した。

(2)26日、メドベージェフ・ロシア大統領が初の公式訪問。チャベス大統領との首脳会談に於いて原子力協力、投資保護及び産業分野に係る7つの協定に署名した。また27日には両国合同軍事演習の為来訪している露北洋艦隊の視察を行った。

(3)26日、カラカスに於いて第3回米州ボリーバル代替構想(ALBA)特別サミットが開催。加盟諸国及びエクアドル首脳が参加し、域内における共通通貨圏の創設に向けたメカニズム構築を合意した。

            

内 政

1.23日地方選挙に向けた諸動向

(1)ラピ・ヤラクイ州知事候補(野党)の立候補停止

(イ)3日、最高裁選挙法廷はラピ・ヤラクイ州知事候補(元同州知事)に対し統一地方選挙への立候補停止の判決を下した。選挙法廷は判決理由について、同候補が07年4月に自身の汚職容疑について係争中の拘置所から逃走し、その後本年1月よりペルーに亡命していることは、刑法259条が定める逃亡罪に当たり、今次立候補者の容認は、法令遵守義務を定めた憲法第131条及び、判事に対し憲法の一体性の擁護を義務づけた第334条に違反しているとした。またラピ候補が立候補して勝利した場合、収監されることなく帰国できる可能性についても憲法に違反するとの見解を示した。

(ロ)これに対してラピ候補は亡命先のペルーにおいて、本判決に対して係争する構えを見せた。さらにディアスCNE委員(反政府)は、すべての反政府候補者は選挙闘争に加え、国家に対する闘争も実施しなければならなくなった、と発言した。なお、野党側は8日、最高裁決定は選挙権及び被選挙権を侵害し、憲法違反であるとして批判しつつ、ラピ候補の兄弟であるフィリッポ・ラピ候補を代替候補として擁立することを決定た。

(2)スクレ州カルパノ空港占拠事件

(イ)9日、チャベス大統領は遊説先のスクレ州に於いて、ラミーレス・エネルギー石油大臣が同州カルパノ空港におけるベネズエラ石油公社(PDVSA)オペレーション基地設置を申請したにも拘わらず、州政府がこれを拒否しているとして、国軍スクレ州駐留部隊に対し、空港の占拠を指示した。

(ロ)10日、マルティネス・スクレ州知事(野党)は記者会見を開き、カルパノ空港が軍により占拠されたと発表した。同知事はPDVSA基地設置に関するチャベス大統領の批判について、州政府として許可を与えなかったのではなく、本年3月より、インフラ省及び国際民間航空機関(ICAO)の定める安全基準を達成するよう通知している状態であると説明した。なおこれについて駐留部隊側は、空港の占拠は行っておらず、同空港のインフラ整備状況を検査したのみであると述べている。

(3)統一地方選挙に対する与野党の動向及び見方

(イ)12日、チャベス大統領は統一地方選挙の結果、ある州で反政府派が勝利を収めた場合、真っ先に承認するであろうと述べると同時に、反政府派に対しても選挙結果を受け入れるよう要求した。

(ロ)13日、ロハスPSUV第一副党首は、国会でのPSUV役員及び議員会議において、当初PSUVが大半の州知事及び市長ポストを獲得するであろうと発言していたが、最終的に与党が勝利する見込みのある州が14州であるとの見方を示した。

(ハ)これに対し野党各政党は8日、カラカス市内に於いて、有権者に対し地方選挙における投票を呼びかけるとともに、スリア州、ヤラクイ州、カラボボ州(注:政府からの攻撃の対象となっている)等における野党側候補者に対する連帯を示す会合を開催した。

                  

      

2.選挙プロセスに関する諸動向

(1)選挙監視団の参加

(イ)6日、全国地方選挙に際し、国内4NGOより選挙監視員として約2,000名が参加し、選挙監視活動を実施する予定であると報じられた。尚、右の内3団体は、昨年12月に実施された憲法改正国民投票においても監視団として参加している。

(ロ)また13日、ディアスCNE委員は今次選挙プロセスへの「同伴」を行う海外からの選挙監視団が19日に到着すると述べ、ベネズエラの選挙システムに関するセミナー受講の後、22日より全国9州及びカラカス首都区の各投票会場において監視活動を開始すると発表した。同監視団は投票にかかる全過程にアクセスが可能であり、選挙終了後には、ルセナCNE委員長に対して最終報告書を提出する予定である。

(2)選挙規則違反疑惑に対するCNEの調査

(イ)11日、ディアスCNE委員(政治参加及び資金調達委員会委員長)は、チャベス大統領の広告及びプロパガンダに関する選挙規則違反の疑いについて、調査を開始すべきであるとの自身の提案がCNEで却下されたことを発表した。同委員は、チャベス大統領がカラボボ州及びスリア州における公式行事に於いて、PSUVの両州知事候補を支持する政治活動を行ったとして調査を要求していたが、今回、CNEは大統領の政治的権利を制限することはできないとして、右提案を却下した。

(ロ)13日、同委員は、CNE政治参加及び資金調達委員会に持ち込まれる選挙広報規則違反の訴えが膨大な数に上るうえ、これらの訴えは更にCNE理事会での審議での調査を要するため、23日の投票日までにすべての違反について制裁を課すことは不可能であると述べた。現在までに候補者、政府組織及びマスコミに対する行政調査が週約70件実施されており、約25件の選挙広告が停止または放送禁止の措置を受けている。

(3)立候補辞退の受付期間終了

 13日、統一地方選挙に対する立候補辞退の受付期間が終了した。右に関し野党連合は、野党内で複数候補を有していたポストについて、統一候補擁立を調整していたものの、ボリーバル州、ヤラクイ州、アンソアテギ州及びカラカス首都区のチャカオ市及びエル・アティージョ市長職等全国複数の市で統一候補を擁立することができなかった。

(4)結果公表方法の発表

(イ)19日、CNE委員会は報道関係者各代表と選挙結果の公表方法について協議し、報道関係者に対して、CNEによる第一次結果公表後即座に行われる票の集計結果写しを配布することで合意した。またCNEは各投票所の様子に関する情報を報道関係者の協力で得ることを目的として、報道関係者の便宜に供するための控え室を設置するとし、第一次公式発表後にはCNEより配布された暗証番号を用いてインターネットからも選挙結果にアクセスできるようになると発表した。

(ロ)同会議に出席していたラベルGlobovision代表は、各報道関係者に対し、CNEの発表する選挙結果を尊重し、異議がある場合には法的手段を講じるよう呼びかけた。さらに同氏はCNEの第一次公式発表までには時間がかかるであろうが、右公式発表から十分かつ当否が確定した情報を入手できるため、神経質になることはない、と述べた。

(ハ)なお、CNEは各政党代表者との協議に於いて、選挙結果の公表方法に関し、全34,622ヶ所の投票テーブルでの投票が終了し、投票結果の集計が85%終了した時点で第一次公式発表を発出することで合意している。選挙関係者によると、公式発表は全投票テーブルが閉鎖された3,4時間後に発出される見込みである。

  

 

 

3.統一地方選挙投票及び結果の発表

(1)投票当日の様子

(イ)今次選挙の実施に先立っては、全国で20日から豪雨が続き、全国183カ所の投票所において停電やアクセスの問題が見られるとともに、投票所設置の遅延及び当日の悪天候が懸念されたが、政府発表によれば、投票日前日22日時点で全ての投票所の設置が完了し、予定通りの選挙実施となった。

(ロ)23日、チャベス大統領は午後12時45分頃、カラカス市内「1月23日」地区で投票を終えて会見し、同日の選挙プロセス遂行を評価しつつ、国民及びメディアに対して、冷静に結果を待ち、絶望に陥らないように呼びかけた。また、当国の選挙システムは世界でも有数の確実なものであって不正が行われる可能性はないと述べ、国民に投票に赴くよう訴えた。

(ハ)同日16時20分、ルセナCNE委員長は、選挙法第158条に基づき、各投票所に対し、16時時点で有権者が投票所にいる場合は、全ての投票が終了するまで投票所を開けておくよう要請した。また、各政治組織に対して冷静及び忍耐を求め、CNEが選挙結果を発表できる唯一の機関であり、CNEに先んじて結果発表を行った場合は罰則を課すと述べつつ、CNEとして断固として法律を遵守する意向であることを示し、CNEに圧力をかけようとする声を批判した。

(2)全国知事選挙結果発表

24日0時、ルセナCNE委員長は統一地方選挙第一次結果を発表し、集計率95.67%時点において、PSUVが17州、野党が5州+カラカス首都区を獲得したと発表した(注:結果が接戦であるとして右時点で発表されなかったタチラ州及びカラボボ州については、24日未明、両州選挙委員会が結果を発表)。同時に今回の投票率は65.45%であると発表した。

(3)全国市長選挙結果発表

25日、CNEはアルト・アプーレ特別区を除く全326市の結果を公表した。この結果PSUVは、カラカス首都リベルタドール市及び15州都を含む263市に於いて勝利を治め、野党側は7州都を含む48市の勝利に留まった。右によりPSUVは全国市長ポストの81%を占め、04年地方選挙で第五共和国運動党(MVR)として獲得した163市に比較して大きく躍進した一方、与党間選挙協力「愛国同盟」に参加していた「皆のための祖国」党(PPT)は4市に留まった。他方野党は、民主行動党(AD)が野党内では最多の19市の獲得に留まり、選挙前の34市から半減させたのを筆頭に、社会民主主義党(Podemos)が52市から2市、キリスト教社会党(Copei)が24市から9市と軒並み減少させる結果に終わった。またスリア州マラカイボ市長に当選したロサレス・スリア州現職知事が率いる新時代党(UNT)は、同州を中心に7市を獲得するに留まった。

(4)全国州議会議員選挙結果発表

26日、CNEは全州議会議員選挙結果を公表した。右によると改選全233の議席のうち、与党が全体の76%を占める178議席を獲得したのに対して、野党は53議席に留まった(2議席は与党離反)。今次州議会選挙においてPSUVが大きく躍進を遂げた背景について、当地エル・ウニベルサル紙はPSUV側がモロチャ方式を採用し、実質的に同党と同一の双子(モロチャ)政党である選挙勝利者連盟(UVE)に候補者を擁立することで、小選挙区及び比例代表双方で議席を獲得した一方、野党は3つのモロチャ政党を確立したため、票が分散されたとの見方を示した。同時に、野党候補が知事に当選したカラボボ州及びタチラ州では州議会の過半数を与党が占める結果となり、両知事が議会のコントロールを失う可能性を指摘した。

(5)選挙結果に対する各方面の反応

(イ)チャベス大統領の反応

(a)24日未明チャベス大統領はCNEの第一次結果発表直後、PSUVが17州の知事選に勝利したことで、PSUVの強化に祝意を表明するとともに、ベネズエラの地図が再び「真っ赤(rojo-rojito)」に塗られ、社会主義建設の道が正しかったことを示したと述べ、今後、右方針を強化及び拡大する意向を示した。また、今次選挙に於いてPSUVは約600万票を得ており、このうち8州においては次点と10%以上の差で勝利したことを強調した。また、今次選挙における投票率が65.45%に達したことについて、過去になかった記録的な数値であり、民主主義の成功であり、国としての勝利であると評価した。他方、野党に対してはミランダ、スリア、ヌエバ・エスパルタ州及び首都区における勝利を認めるとしつつ、野党側も大統領及び憲法を認めるよう呼びかけるとともに、民主的行動をとることを求めた。

(b)同日、チャベス大統領は大統領官邸に於いて会見を行い、CNEの一次発表によると、野党が07年の国民投票に比較して得票率を10%下落させ、約428万票の獲得に留まった一方、PSUVは得票率を20%上昇させ、約550万票を獲得したと述べた。また市長選に於いてはPSUVが77%において勝利したと強調すると共に、野党はこれまでの7州(注:離反派が治めていたアラグア、カラボボ、グアリコ、スクレ及びトゥルヒージョ各州を含むものと思われる。)を5州に減らしたとして、今次選挙結果はPSUVにとって有利なものであり、野党に重大な敗北を与えたと述べた。さらに反政府派に対して、国内での攻撃的手法を捨て、民主的、かつ討論を通してアイデアを戦わせる手法をとることを望むとし、国民及び憲法制度を尊重するよう呼びかけた。

(c)また大統領無期限再選を可能にする憲法修正については、既に述べているように自ら再度提案することはないとしつつも、政党や国民が憲法改正を申請する権利は憲法上に保障されており、これは妨げられるものではないと発言した。さらにタチラ州及びカラボボ州における選挙結果発表に関し、一部のテレビ局がCNEの一次結果発表以前に両者の結果を報道したとして、国家通信委員会及び、カリサレス副大臣に対し、右を憲法違反とする調査の開始を指示した。

(ロ)PSUVの反応

24日、ロハスPSUV副党首はCNEによる結果発表後、記者会見を開催して選挙結果に対する評価を行い、野党側の勝者に対し祝意を表明しつつ、今次選挙における国民参加が与野党双方に対し政治的対話を行い、相違を解決する可能性を開くものであると述べた。他方、すでに同党として今次選挙結果の分析を開始したとし、今後5州及び首都区における敗因について議論することになると述べつつ、これらの地域においても政府派の市長は存在しており、今次敗北が社会主義プロジェクト実施の可能性を閉ざすものではないと述べた。また「愛国同盟」の行方については、選挙期間中に各政党が行った参加及び貢献を分析し、今後に向けた決定を行うつもりであると述べた。

(ハ)与党間選挙協力「愛国同盟」参加の各政党の反応

(a)PPT

24日、アルボノスPPT書記長はグアリコ、ポルトゥゲサ及びトルヒージョ州で擁立していた独自の知事候補者が敗北を喫した要因について分析し、チャベス大統領がグアリコ州等、与党内に対立候補を有していた「批判的なチャベス派」を重点として分極化した選挙活動を展開したためであると述べた。また右選挙戦略は同時に、5州及び首都区における与党の敗因でもあり、大統領は(内部の)批判に対峙するのではなく、スリア、ミランダ及びカラボボに集中すべきであったとして、同様の選挙活動をミランダ州でも実施していたならば、同州に於いても勝利したであろう、と述べた。また、今後の政治活動について同書記長は、PPTは政治地図から消されたわけではなく、むしろ新たな領域が開かれたとして前向きな見方を示した。

(b)PCV

24日、フィゲラPCV書記長は、今週末に選挙結果の詳細を分析するとしつつも、チャベス派の敗北は選挙活動の分極化及びチャベス派の施政に対して制裁票が投じられた結果であるとの考えを示した。また右結果は自己批判を伴った熟考が必要であるとし、今次選挙の勝利を、議論に実行を伴わずに政治活動をお墨付きを得たかのように受け取ることはできない、と述べた。

(ニ)野党の反応

(a)24日、レデスマ首都区長官候補(勇敢な民の同盟党(ABP))は、自身の勝利を受け、チャベス大統領に対し、両者間に違いはあるとしつつ、カラカスのために共同して取り組むための対話を呼びかけた。また市民の選挙参加に祝意を表明するとともに、首都区における治安対策に緊急に取り組む意向を示した。

(b)また同日、カプリレス・ミランダ州知事候補(正義第一党(PJ))も、今後政党色やイデオロギーに関わらず同州の利益のために取り組むことを表明し、チャベス大統領との対話を行う用意もあると述べた。また地方分権プロセスを深化させることを期待するとして、国会に対し地方分権関連法案を議論するよう求めた。また州政府職員が書類等の持ち出し等を行っている可能性に言及し、職員に対して法から逸脱した行動を行わないよう呼びかけつつ、現在行われている社会プログラムについては、自身の統治下においても継続する意向を示した。

(ホ)国軍による選挙プロセス評価

24日、選挙プロセスにおける国軍による治安対策「プラン・レプブリカ」を指揮した、ゴンザレス国軍作戦戦略司令官は、23日の投票日に於いてグアリコ州及びアンソアテギ州において政治的対立により3名が死亡し、また全国で206名が逮捕されたと発表した。逮捕容疑の多くは選挙機器破損によるものである。また同時に、政治関係者及び国民に対して、市民として成熟を続けると共にベネズエラの良いイメージを国内外に示すためにも、規範及びCNEを尊重し、CNEが発表した結果を尊重するよう呼びかけた。

(ヘ)選挙監視団による評価

24日、選挙監視団として参加した国内NGOの「選挙の目(Ojo Electoral)」は、最終報告書を提出し、今次選挙におけるベネズエラ国民の市民努力、情熱及び成熟を認識しつつ、全国で監視を行った投票テーブルのうち15%が、投票終了時間の午後4時以降にも投票者が列をなしていないにもかかわらず終了時間を延長したと報告した。同じく今次選挙に同伴した国際監視団は、同日夜CNEに対し報告書を提出した。

(ト)米州機構(OAS)の反応

24日、インスルサOAS事務総長は、コミュニケを通じて今次選挙が平静に実施されたことを評価すると共に、大勢の市民参加があったとして、右は民主制度を強化する成熟を示すものだと述べた。また、政府及び野党双方から対話及び問題解決のための協力を模索する姿勢が示されたことを評価した。

 

 

   

4.ロサレス前スリア州知事に対する汚職疑惑

28日、ロサレス前スリア州知事は、スリア州宝くじに関する不正契約、スリア州警察署長への車両不正供与及び、違法な不動産及び資金の取得疑惑への告発に対して説明を行うため国会常設会計委員会の聴聞会へ出頭した。今次聴聞会へはモレノ同委員会委員長(PSUV)を始め、本訴えを起こしたイセアPSUV議員及びカステジャールPSUV議員等が参加し、ロサレス前知事側からは、ペレス次期スリア州知事等が同席した。この中でロサレス前知事は、上記3疑惑に関して関与を否定し、反対に今回の不正疑惑の調査のため、議員らがロサレス前知事の会話を違法に録音した上、右が複数のメディアで公開されたことに対して、同前知事は法を遵守していないのは議員側であり、違法録音により自身の人権が侵害された旨主張した。

 

 

 

5.大統領無期限再選を巡る動き

30日、チャベス大統領はPSUVに対し大統領の無期限再選を可能にする憲法修正実現に向けて討議及び活動の開始を許可すると発表した。右に関しチャベス大統領は、今回は憲法修正を達成できると確信しており、神が望み、命と健康を授けてくれるのであれば、2019年、2021年もしくは国民が命じるまで大統領を続ける用意はできていると述べた。これに関しベルナルPSUV副党首は、PSUVは大統領無期限再選を達成するために必要なメカニズム構築を始動する予定であり、23日の統一地方選挙の勝利を受けて、憲法修正案発議に必要な有権者15%の署名を収集するため、党員を動員する予定であると述べた。

 

 

 

外 交

  

1. 対ラ米諸国関係

(1)対ボリビア関係

1日、キンタナ・ボリビア大統領府大臣は、チャベス大統領よりモラレス・ボリビア大統領の身辺警護を目的とする16台のトヨタ製四輪駆動車が供与されたと発表し、チャベス大統領による連帯及び無条件の支援に感謝の意を表明した。チャベス大統領は06年にモラレス大統領が政権の座に着いて以来、国軍、地方自治体、労働組合及び社会団体等、ボリビアの様々なセクターに対して直接の資金援助を行っており、ボリビア外務省によれば、右額は10月までに1億3,250万ドルに達し、本年末までには2億1,400万ドルに達すると試算されている。

(2)対コロンビア関係

(イ)11日、サントス・コロンビア国防大臣は、FARC内における「カリブ・ブロック」が、グループを維持するための収入基盤をベネズエラとの国境地帯における誘拐においており、また他のブロックも国境地帯で同様の活動を行っているとした。同国防大臣によれば、このような国境地帯における犯罪の増加は、FARCの経済的窮乏状態に起因しており、コカ農家等に対する債務支払いも行えない状態であると指摘した。

(ロ)30日、マドゥーロ・ベネズエラ外務大臣は、ガルビス駐マラカイボ市(スリア州)コロンビア総領事が、23日実施された統一地方選挙における野党勝利に言及したことに関して、コロンビア政府に召還されることになった旨発表した。同総領事はガビリア・コロンビア大統領顧問と見られる人物との間の電話上の会話で、同選挙について、「(選挙の)結果は野党にとって戦略的に好ましいものであり、我々の良き友人であるペレス次期スリア州知事(UNT)やロサレス次期マラカイボ市長(UNT)の選出は我々の業務に有利である。」旨述べており、右会話の録音がVTV(ベネズエラ国営TV)局で放送された。これに対して同日、チャベス大統領は、同総領事を追放しないための唯一の方法は、コロンビア政府が同総領事を召還することであり、コロンビア政府がそのような決定を下すことを期待する旨発言しており、マドゥーロ外務大臣は、ベルムデス・コロンビア外相から電話で、同総領事を召還する旨電話連絡を受けたことを明らかにした。他方で同総領事は、本件のような会話の録音は国際犯罪であると批判した上で、いかなる陰謀への関与も否定した。

(3)対ペルー関係

12日、ペルー国会に於いてALBA事務所の調査を実施している委員会の所属議員3名が右組織の資金出所及び海外組織との関係を調査する目的でベネズエラを来訪した。ラモス同委員会法律顧問によると、右メンバーはカラカスにてミラクル・ミッション(注:当国が実施している無料の眼科手術プロジェクト)担当者と会談し、その後実際に処置が行われているバルキシメト(ララ州)の病院を訪問する予定である。また一行は14日にはコロンビアを訪問し、FARCとALBA事務所との関係を明らかにすべく、死亡した「ラウル・レージェス」 FARC幹部のコンピューター・データに関してコロンビア検察当局と協議する予定である。同委員会は、ALBA事務所がベネズエラまたは他のALBA加盟国から資金援助を受けているか、またペルーに対する内政干渉の道具となっているかにつき、見極めることになっている。

(4)対ニカラグア関係

(イ)11日チャベス大統領は、先般実施されたニカラグア統一市長選挙における、サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)の勝利についてオルテガ・ニカラグア大統領に対し祝意を表明した一方、米国政府報道官が、ニカラグアの最高選挙管理委員会(CSE)を批判したことについて、他国の国内問題に干渉しないよう求めつつ、ブッシュ大統領を強く批判した。またニカラグアの反政府右派勢力が、CSEの発表した選挙結果及び国民の勝利を認めないために後押しした暴力の出現は、米国によって支援されたものであると確言した。

(ロ)16日、当国外務省は米州ボリーバル代替構想(ALBA)加盟国の名において、ニカラグア統一市長選挙に対するコミュニケを発出し、同国における選挙実施を賞賛すると共に、オルテガ同国大統領及びFSLNに対し、ALBA地域における人民の進歩的及び左派の前進を更に強化するこの歴史的勝利に祝意を表し、同国の意志を転覆させようとする米国政府の意図を再度拒絶する旨表明した。

(5)対キューバ関係

18日、チャベス大統領は、日程は近日中に発表するとしつつ、数日中にラウル・カストロ・キューバ国家評議会議長が当国を訪問する予定であると発表した。同訪問が実現すれば、同議長にとって08年2月の就任以来、初の外遊となる。右に関しチャベス大統領は、同議長はブラジル、中国、ロシア及び他諸国から招待を受けているが、キューバ国家元首として当国を訪問しない限りは、他のどの国も訪問しないつもりである旨通知された、と述べた。

(6)多国間関係

(イ)26日、当国大統領官邸において第3回ALBA特別サミットが開催され、チャベス大統領、モラレス・ボリビア大統領、オルテガ・ニカラグア大統領、セラヤ・ホンジュラス大統領、スケリット・ドミニカ国首相、カブリサス・キューバ国家評議会副議長及びオブザーバーとしてコレア・エクアドル大統領が出席した。本会議では世界金融危機への対応が協議され、参加国は世界金融システム及びドル支配からの脱却を目的として、域内における共通通貨圏の創設に向けたメカニズムを構築することで合意し、またこのための技術委員会が構成されることが決定した。

(ロ)提案によると、右共通通貨圏構想は第1段階として商取引メカニズム構築のため仮想通貨による地域間相殺統一システム(SUCRE)の創設が検討されており、ベネズエラは相殺基金の当初資本として5億ドル出資する用意がある他、将来的には共通通貨の創設が見込まれている。なお右提案に関し、コレア大統領は、域内開発銀行、ラ米域内の共同外貨準備基金、及び通貨政策の調整という3本柱の域内構造の創設を提案している。技術委員会は本件メカニズムの実現可能性について12月14日に開催予定のALBA-ペトロカリブ首脳会談に於いて報告書を提出する予定であり、チャベス大統領は提案が承認されればこの共通通貨圏が明年1月1日より機能することも可能であると述べた。また最終文書によれば、ALBA諸国はこの他世界金融危機に対処するための安定化基金を創設する見込みであり、さらに地域間の合意締結を調整し、通貨、金融及び銀行に関する規制を行う国際通貨理事会創設についても検討するとしている。

(ハ)同サミットの席上でコレア大統領は同国が「不法」かつ「非合法」な対外債務について支払いを行わないと決定したことについて、ALBA諸国は特別宣言を発出して、エクアドルの債務支払い拒否の決定に支持を表明すると共に、債務国に対して監査を行うよう提言した。

(ニ)またチャベス大統領は、米州開発銀行(IDB)及びアンデス開発公社(CAF)が貸し付けのために圧力をかけるメカニズムとして利用されていると述べ、これから脱退し、独自のメカニズムを作る方が良いと述べた。同大統領は、IDBについてはその貸し付け条件が各国の批判対象となっており、またCAFについてはIMFと同様に貸し付けを行っているとして、カラカスに所在する同社本部を閉鎖させ、我々の銀行の本部とする必要性もあると示唆した。

   

 

2. 対米関係

(1)オバマ次期米大統領の当選

(イ)5日、当国外務省はコミュニケを発出し、米国民及び国際社会の期待の声を結集した選挙で重大な勝利を収めたバラック・オバマ次期大統領に対して祝意を表明し、主権の絶対的尊重に基づき、両国民の福祉のための建設的な二国間アジェンダを構築する意志と決意を表明すると発表した。

(ロ)ベネズエラ関係者の反応

(a)マドゥーロ外務大臣の反応

6日、マドゥーロ外務大臣は、オバマ候補の勝利に関して、主権の尊重、国家平等原則及び、新しい時代を切り開く建設的なアジェンダに基き、新たな関係を構築する時が来たと発言し、世界は、戦争、帝国覇権主義及び天然資源搾取を終わらせる新たな関係枠組、及び相互の尊重に基づく新たな金融システムの構築を望んでいるが、オバマ氏の勝利により新たな国際関係を可能にする時代が訪れているとして、楽観的に考えていると述べた。またチャベス大統領とオバマ次期米大統領との会談の可能性について憶測するのは時期尚早であり、ダディー駐ベネズエラ米国大使のベネズエラ帰任の可能性についても、時期を捉えて判断されるべきとの考えを示した。

(b)国会の反応

6日、国会はオバマ次期米大統領及び米国民に対し、大統領選挙における勝利及び今次選挙における市民精神及び民主主義の実践に対する祝意決議を可決した。本決議では、米国民がオバマ氏を次期大統領に選出したことで変化を選択したが、右は米国民に対する希望のメッセージであると述べると同時に、キューバに対する経済制裁の停止、アフガニスタン及びイラクからの軍の撤退、グアンタナモ基地撤廃及びメキシコ国境沿いの塀の撤去を求めた。

(c)ゴンザレス国軍作戦戦略司令官

6日、ゴンサレス同司令官は、ベネズエラ国民はオバマ新政権の下でも、軍事面において米国は当国にとって引き続き脅威であることを認識すべきであると述べ、新大統領が外交面でいくつかの成果を上げることができたとしても、米国の目的は引き続き世界を支配することであると述べた。

(d)ダサ国会外交委員会委員長(PSUV議員)

5日、ダサ同委員長は、ダディー前駐ベネズエラ米国大使が追放されて以降、両国の政治関係は大きく悪化したが、オバマ候補の勝利は、米・ベネズエラ関係再構築の扉を開くだろうとし、政治対話が構築されれば、当国政府は少なくとも5つの重要な地球規模アジェンダ、すなわち、エネルギー危機、食糧危機、金融危機、環境危機及び国連の民主化を提起することになると述べた。さらに両国の最初の対話は、来年1月の米政権交代前に始めることも可能であるとし、米国新政権は、まずブッシュ政権高官が行ってきた攻撃的政策を放棄し、クリントン政権との間にあったような対話と尊重に基づく関係が構築された後に、ペンディングとなっていたテーマについて話し合うべきであると発言した。

(2)「アントニーニ」事件に対する判決

3日、昨年8月にベネズエラ人企業家がアルゼンチンに現金約80万ドルを持ち込もうとした事件について、米国政府の承認無く、同国内でベネズエラ政府のエージェントとして現金の出所及び目的を隠蔽すべく活動したとされるドゥラン氏の容疑に関する審議が終了し、陪審側は同氏に対して有罪の決定を下した。同氏への判決は来年1月12日に確定される見込みである。本件に関し、検察側は搬送された現金が、チャベス大統領がフェルナンデス・アルゼンチン大統領の選挙キャンペーンに対して送った資金の一部であったとし、また本件への関与が指摘され、既に罪を認めて米国当局に対し司法協力を行っているベネズエラ人2名及びウルグアイ人1名についても、今後処罰を確定する予定であると述べた。これに対しドゥラン氏弁護側は上訴する構えを示しつつ、本件裁判を政治的ショーと批判し、ドゥラン氏は米国政府に操られたと述べた。

(3)在米ヒューストン・ベネズエラ総領事館の閉鎖

(イ)9日、10月31日に米国当局が在米ヒューストン・ベネズエラ総領事館に対し、同館が当局の許可なく移転し、業務を開始していたとして、館員12名のビザ及び外交特権剥奪及び、11月9日までの国外退去を命じ、7日より同館が期限未定で閉館している件に関して、ベネズエラ外務省はコミュニケを発出し、本件は単なる行政手続き上の問題であったとしつつ、2国間の外交ルートを通じて解決済であり、ベネズエラ側職員は誰一人国外追放措置を受けていないと発表した。

(ロ)これに対し10日、チャベス大統領は同領事館職員の米国強制退去の事実はないとした上で、パドリーノ総領事については、ベネズエラ及び米国両政府の許可を得ずに、事務所移転を行ったため政府として解任したものであると発表した。さらに大統領は、間違いがあった事実を認めなければならないとしつつも、国内外のいくつかのマスコミが本件を悪用し、事実を歪曲して報道したと批判した。他方マドゥーロ外務大臣は、本件はすでに事実関係が明白になっており、行政的及び外交的に解決済みであるとしながら、今回の事実関係の混乱は、米国の政権移譲のこの時期に於いて、オバマ新政権下で米ベネズエラ両国が構築し得る新しい関係に、騒ぎや対立を生じさせようとするものであるとの考えを示した。

             

       

 

3.対ロシア関係

(1)セチン・ロシア副首相の来訪

(イ)6日、チャベス大統領は当国訪問中のセチン・ロシア副首相と会談し、メドベージェフ大統領の当地来訪が11月26日に実施される旨発表し、右を「歴史的出来事」と強調したうえで、両国が原子力エネルギーの平和利用に関する協定締結方交渉中であることを明らかにした。

(ロ)また同日、同副首相は第5回ロシア・ベネズエラ・ハイレベル政府間協議に出席した。同決議においてマドゥーロ外相は、両国がカラカス・モスクワ間直行航空便を開設するための協定に署名する予定であり、右はベネズエラの国営航空会社であるConviasa航空が運行する旨明らかにすると共に、衛星シモン・ボリーバルを用いた、両国による宇宙開発の拡大についても言及した。その他ロドリゲス財務大臣は、ロシア・ベネズエラ共同銀行設立のための覚書に署名し、その機能及び資本金について協議するためのワーキング・グループがすでに始動したと発表し、オソリオ食糧大臣及びハウア農業・土地大臣もロシアから当国へ小麦、UHT牛乳、粉乳、ソーセージ及びマーガリンを、当国からロシアへカカオ豆9,000トン及びカカオ製品400トンを、相互に輸出し合うことが提案された旨明らかにし、サンス基礎産業・鉱業大臣は、1000万オンス以上の埋蔵量を誇り世界有数の金鉱であるラス・クリスティーナス金鉱山及びブリサス金鉱山(ともにボリーバル州)の開発権を、ロシアのRusoro社に譲渡する予定であることを明らかにした。

(2)ベネズエラ及びロシア共同軍事演習

(イ)共同軍事演習に対する各方面の反応

(a)コロンビアの反応

10日、ベルムデス・コロンビア外務大臣は、ベネズエラ及びロシアの合同軍事演習に関し、両国との協議を通じ、本演習がコロンビアとの隣接地帯では行われていない旨明確にされているとして、緊張関係を生み出すとの見方を否定しつつも、本演習により地域的懸念が生じた際には、本件を南米防衛評議会で議論する可能性もあると発言した。

(b)ゴンザレス・ベネズエラ国軍作戦戦略司令官発言

11日、ゴンサレス国軍作戦戦略司令官は、ベネズエラ及びロシアの合同軍事演習に関し、今次演習は近隣諸国になんら懸念を与えるものではなく、また当国の外交関係に影響を及ぼすものではないと確言し、コロンビア等の近隣諸国との関係は大変良好なものであると評価した。

(c)ラブロフ露外務大臣の発言

19日、コロンビアを公式訪問中のラブロフ露外務大臣は、ベネズエラとの合同軍事演習はコロンビア国境より遠方で実施する予定であると発表し、ロシアはコロンビアの友好国であり、カリブ海におけるベネズエラとの合同軍事演習は同国の安全を脅かすものでは決してないと述べた。

(d)アモリン伯外務大臣の発言

19日、アモリン伯外務大臣は報道陣に対し、ベネズエラ及びロシアはブラジルの友好国であり、両国の合同軍事演習はブラジルにいかなる懸念をももたらさない、と発言した。

(ロ)ロシア北洋艦隊の到着

25日、ロシア艦隊がラ・グアイラ港(バルガス州・カラカス近郊)に到着した。同日、ロシア側のVisotkiy大将と会談した国軍キンタナ海軍大将は、今次演習が2段階にわたって実施されるとし、第一段階として演習中に使用されるマニュアルの確認が行われた後、第二段階として12月1日から3日にかけて海洋における人員及び貨物の積み替え、通信演習、麻薬及びテロ対策演習を実施すると説明した。またキンタナ大将は、今回到着したロシア艦隊は原子力推進艦であるが核兵器は搭載していないとして、右がトラテロルコ条約には抵触しないと述べるとともに、今次ロシア艦隊の訪問は国軍が諸外国と実施する通常の合同軍事演習の一部であることを繰り返した。オペレーション責任者のモラレス海軍中将も、露巡洋艦が核兵器を掲載していない旨強調するとともに、今次演習の目的は、安全保障上における手続き等の情報交換を行うことであり、海洋交通にとって懸念事項であろう大砲打ち上げの訓練も実施しないとして、今上演習を平和裏に行うとの取り極めを確認する一方、今次演習が、今後当国海軍のロシア等、他の領海で同様の軍事演習を行う第一歩となる可能性もあるとした。他方、ブリセーニョ国防大臣は、国軍はこれまで米国の方針に沿って養成及び運行を行ってきたが、今次演習により国軍におけるイデオロギー変革プロセスの更なる深化が可能になると述べている。

(3)メドベージェフ大統領の公式訪問

(イ)26日、メドベージェフ大統領が、ロシア大統領として初めて当国を公式訪問し、チャベス大統領と首脳会談を行い、7つの協定に署名した。右のうち1つは非軍事、平和利用を目的とする原子力協力に関するもので、ベネズエラのエネルギー源多様化を目指す旨規定している。その他、航空協力、投資保護、産業分野における協力、両国間の観光客に対するビザ免除、海事協力及びオリノコ・ベルト地帯アヤクチョ第3鉱区における共同探査に関する協定が締結された。さらにメドベージェフ大統領は、チャベス大統領との共同記者会見において、ALBAへの準加盟、及び正当な石油価格維持のためのOPECに対する協力メカニズムについて検討する旨述べた。また、15日以内に、40億ドルの資金を有するロシア・ベネズエラ共同開発銀行が始動することを発表した。

(ロ)27日、両大統領は、両国軍による合同軍事演習実施のためにロシア北洋艦隊が停泊しているラ・グアイラ港を訪れ、ロシア大型対潜艦を視察した。同視察中に、両大統領は、ロシアからベネズエラへの航空機2機の売却契約に署名し、右協定により、260人の輸送能力を持つロシア製航空機2機が、ベネズエラ国営航空会社「コンビアサ」社に提供され、欧州、アジア及びアフリカ路線が運行される見込みである。

(4)ベネズエラによるロシアからの武器購入

26日、ブリセーニョ国防大臣は、ベネズエラ国軍の軍備強化のため、高い確率でロシアからさらに武器を購入する可能性がある旨発言した。また、同大臣は右に関し、米国がベネズエラ国軍の軍備強化を阻害したことが、他の軍備市場を探さざるを得なくなった原因であると述べた。ロシアとの合同軍事演習について同大臣は、ロシア艦隊はベネズエラに来月6日乃至7日までとどまり、来月初頭にはベネズエラ空軍及び海軍が参加するVen-Rusオペレーションが開始され、右には将来的には陸軍も参加することが見込まれている旨発表した。また、合同軍事演習は、外国軍の国内駐留を制限する憲法規定に従い、領海内ではなく排他的経済水域で実施されることを明らかにした。

   

 

4.対欧州関係

(1)欧州議会議員の来訪

1日、反政府派の学生グループが主催した民主主義に関するフォーラムに出席するために当国を来訪中の欧州議会議員3名(ディミトロフ元ブルガリア首相、ラムル・チェコスロバキア「ビロード革命」指導者及びクーカン元スロバキア外相)は、キング・ソビエト専門家とともに、02年4月クーデターに関わる一連の国内混乱を巡り軍事刑務所に収監されている軍及び警察関係者と面会した。他方、内務司法警察(Disip)に拘留されたままの状態にある警察関係者への面会を試みたところ、Disipによって拒否されたことに対し、ラムル氏は、当国における人権状況に疑念が生じたと述べ、右対応を批判した。なお、2日には法王庁大使館に匿われているニクソン・モレノ学生運動指導者を訪問し、同人に対し未だ政府当局から通行許可証が発行されず、バチカンへの亡命が実現していないことを批判した。

(2)ワレサ元ポーランド大統領の来訪中止

(イ)1日、同フォーラムに参加するため、当国を訪問予定であったワレサ元ポーランド大統領は訪問を中止する旨発表した。ジャセック駐ベネズエラ・ポーランド大使によると、先月30日、同大使が当国外務省に対し、同元大統領の訪問に際し「儀礼待遇」を請求したところ通知が遅かったため元大統領の安全を保障できない旨回答がなされたとし、同元大統領はこれをベネズエラ当局が「外交的表現」を使って右訪問を望まない旨表明したものと受け取り、訪問をとりやめた由である。

(ロ)右に関し、当国通信情報省は、ポーランド大使館名の声明を公表し、当国政府により同元大統領に対してペルソナ・ノン・グラータ通告、又は入国禁止の措置がとられたとの見方を否定した。また、フレミング外務省欧州担当次官は、右報道について「欧州右派及びクーデターを画策するマスメディアによる陰謀」であると非難した。

(ハ)同日、同元大統領はポーランドのTV局のインタビューにおいて、チャベス大統領の政策を批判し、共産主義システムをベネズエラに導入することになれば多大な過ちとなると指摘しつつ、これまで数次に渡りチャベス大統領との会談を取りやめた旨明かした。

    

 

 

5.対ベトナム関係

(1)19日、当国を訪問中のグエン・ミン・チエット・ベトナム社会主義共和国国家主席はマドーゥロ外務大臣及びロドリゲス財務大臣同席の中、国会特別審議において演説を行った。右演説でチエット国家主席は、今回の訪問の目的は、両国間の相互利益のために、多分野に於ける友好協力関係を深化させることであるとし、今次訪問は大変名誉であると述べた。これに対し、フローレス国会議長は、ベトナム国家主席の初の当国訪問はチャベス大統領就任以降、両国の友好関係が強化されてきたことの表れであると評し、またビバス・ベネズエラーベトナム友好議員連盟代表は、両国はともに独立、自由、連帯及び主権の旗を掲げており、それ故両国間には、革命的類似性があると述べた。

(2)20日、チャベス大統領は、チエット国家主席と会談し、両国の関係強化を目的とした行動枠組み内における、農牧、エネルギー、投資保護、教育及び国民経済等、多岐にわたる15の協力協定に署名した。中でもPDVSA及びベトナム石油ガス公社(PETROVIETNAM)間でのオリノコ・ベルト地帯フニン第二鉱区の開発のための合弁会社設立協定が特筆される。さらにチャベス大統領は、資金2億ドルの二国間基金の創設を発表し、ベネズエラは開設資金として国家開発基金(FONDEN)より5,000万ドルを出資する、と述べた。本基金はカラカスにあるラテン金融センターに設置される予定であり、ベトナムの技術協力による節約型電球工場建設計画(資金2億6,600万ドル予定。ファルコン州)等、今回結ばれた協力協定に基づく計画に対して資金供与を開始する予定である。

 

 

    

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