3.統一地方選挙投票及び結果の発表
(1)投票当日の様子
(イ)今次選挙の実施に先立っては、全国で20日から豪雨が続き、全国183カ所の投票所において停電やアクセスの問題が見られるとともに、投票所設置の遅延及び当日の悪天候が懸念されたが、政府発表によれば、投票日前日22日時点で全ての投票所の設置が完了し、予定通りの選挙実施となった。
(ロ)23日、チャベス大統領は午後12時45分頃、カラカス市内「1月23日」地区で投票を終えて会見し、同日の選挙プロセス遂行を評価しつつ、国民及びメディアに対して、冷静に結果を待ち、絶望に陥らないように呼びかけた。また、当国の選挙システムは世界でも有数の確実なものであって不正が行われる可能性はないと述べ、国民に投票に赴くよう訴えた。
(ハ)同日16時20分、ルセナCNE委員長は、選挙法第158条に基づき、各投票所に対し、16時時点で有権者が投票所にいる場合は、全ての投票が終了するまで投票所を開けておくよう要請した。また、各政治組織に対して冷静及び忍耐を求め、CNEが選挙結果を発表できる唯一の機関であり、CNEに先んじて結果発表を行った場合は罰則を課すと述べつつ、CNEとして断固として法律を遵守する意向であることを示し、CNEに圧力をかけようとする声を批判した。
(2)全国知事選挙結果発表
24日0時、ルセナCNE委員長は統一地方選挙第一次結果を発表し、集計率95.67%時点において、PSUVが17州、野党が5州+カラカス首都区を獲得したと発表した(注:結果が接戦であるとして右時点で発表されなかったタチラ州及びカラボボ州については、24日未明、両州選挙委員会が結果を発表)。同時に今回の投票率は65.45%であると発表した。
(3)全国市長選挙結果発表
25日、CNEはアルト・アプーレ特別区を除く全326市の結果を公表した。この結果PSUVは、カラカス首都リベルタドール市及び15州都を含む263市に於いて勝利を治め、野党側は7州都を含む48市の勝利に留まった。右によりPSUVは全国市長ポストの81%を占め、04年地方選挙で第五共和国運動党(MVR)として獲得した163市に比較して大きく躍進した一方、与党間選挙協力「愛国同盟」に参加していた「皆のための祖国」党(PPT)は4市に留まった。他方野党は、民主行動党(AD)が野党内では最多の19市の獲得に留まり、選挙前の34市から半減させたのを筆頭に、社会民主主義党(Podemos)が52市から2市、キリスト教社会党(Copei)が24市から9市と軒並み減少させる結果に終わった。またスリア州マラカイボ市長に当選したロサレス・スリア州現職知事が率いる新時代党(UNT)は、同州を中心に7市を獲得するに留まった。
(4)全国州議会議員選挙結果発表
26日、CNEは全州議会議員選挙結果を公表した。右によると改選全233の議席のうち、与党が全体の76%を占める178議席を獲得したのに対して、野党は53議席に留まった(2議席は与党離反)。今次州議会選挙においてPSUVが大きく躍進を遂げた背景について、当地エル・ウニベルサル紙はPSUV側がモロチャ方式を採用し、実質的に同党と同一の双子(モロチャ)政党である選挙勝利者連盟(UVE)に候補者を擁立することで、小選挙区及び比例代表双方で議席を獲得した一方、野党は3つのモロチャ政党を確立したため、票が分散されたとの見方を示した。同時に、野党候補が知事に当選したカラボボ州及びタチラ州では州議会の過半数を与党が占める結果となり、両知事が議会のコントロールを失う可能性を指摘した。
(5)選挙結果に対する各方面の反応
(イ)チャベス大統領の反応
(a)24日未明チャベス大統領はCNEの第一次結果発表直後、PSUVが17州の知事選に勝利したことで、PSUVの強化に祝意を表明するとともに、ベネズエラの地図が再び「真っ赤(rojo-rojito)」に塗られ、社会主義建設の道が正しかったことを示したと述べ、今後、右方針を強化及び拡大する意向を示した。また、今次選挙に於いてPSUVは約600万票を得ており、このうち8州においては次点と10%以上の差で勝利したことを強調した。また、今次選挙における投票率が65.45%に達したことについて、過去になかった記録的な数値であり、民主主義の成功であり、国としての勝利であると評価した。他方、野党に対してはミランダ、スリア、ヌエバ・エスパルタ州及び首都区における勝利を認めるとしつつ、野党側も大統領及び憲法を認めるよう呼びかけるとともに、民主的行動をとることを求めた。
(b)同日、チャベス大統領は大統領官邸に於いて会見を行い、CNEの一次発表によると、野党が07年の国民投票に比較して得票率を10%下落させ、約428万票の獲得に留まった一方、PSUVは得票率を20%上昇させ、約550万票を獲得したと述べた。また市長選に於いてはPSUVが77%において勝利したと強調すると共に、野党はこれまでの7州(注:離反派が治めていたアラグア、カラボボ、グアリコ、スクレ及びトゥルヒージョ各州を含むものと思われる。)を5州に減らしたとして、今次選挙結果はPSUVにとって有利なものであり、野党に重大な敗北を与えたと述べた。さらに反政府派に対して、国内での攻撃的手法を捨て、民主的、かつ討論を通してアイデアを戦わせる手法をとることを望むとし、国民及び憲法制度を尊重するよう呼びかけた。
(c)また大統領無期限再選を可能にする憲法修正については、既に述べているように自ら再度提案することはないとしつつも、政党や国民が憲法改正を申請する権利は憲法上に保障されており、これは妨げられるものではないと発言した。さらにタチラ州及びカラボボ州における選挙結果発表に関し、一部のテレビ局がCNEの一次結果発表以前に両者の結果を報道したとして、国家通信委員会及び、カリサレス副大臣に対し、右を憲法違反とする調査の開始を指示した。
(ロ)PSUVの反応
24日、ロハスPSUV副党首はCNEによる結果発表後、記者会見を開催して選挙結果に対する評価を行い、野党側の勝者に対し祝意を表明しつつ、今次選挙における国民参加が与野党双方に対し政治的対話を行い、相違を解決する可能性を開くものであると述べた。他方、すでに同党として今次選挙結果の分析を開始したとし、今後5州及び首都区における敗因について議論することになると述べつつ、これらの地域においても政府派の市長は存在しており、今次敗北が社会主義プロジェクト実施の可能性を閉ざすものではないと述べた。また「愛国同盟」の行方については、選挙期間中に各政党が行った参加及び貢献を分析し、今後に向けた決定を行うつもりであると述べた。
(ハ)与党間選挙協力「愛国同盟」参加の各政党の反応
(a)PPT
24日、アルボノスPPT書記長はグアリコ、ポルトゥゲサ及びトルヒージョ州で擁立していた独自の知事候補者が敗北を喫した要因について分析し、チャベス大統領がグアリコ州等、与党内に対立候補を有していた「批判的なチャベス派」を重点として分極化した選挙活動を展開したためであると述べた。また右選挙戦略は同時に、5州及び首都区における与党の敗因でもあり、大統領は(内部の)批判に対峙するのではなく、スリア、ミランダ及びカラボボに集中すべきであったとして、同様の選挙活動をミランダ州でも実施していたならば、同州に於いても勝利したであろう、と述べた。また、今後の政治活動について同書記長は、PPTは政治地図から消されたわけではなく、むしろ新たな領域が開かれたとして前向きな見方を示した。
(b)PCV
24日、フィゲラPCV書記長は、今週末に選挙結果の詳細を分析するとしつつも、チャベス派の敗北は選挙活動の分極化及びチャベス派の施政に対して制裁票が投じられた結果であるとの考えを示した。また右結果は自己批判を伴った熟考が必要であるとし、今次選挙の勝利を、議論に実行を伴わずに政治活動をお墨付きを得たかのように受け取ることはできない、と述べた。
(ニ)野党の反応
(a)24日、レデスマ首都区長官候補(勇敢な民の同盟党(ABP))は、自身の勝利を受け、チャベス大統領に対し、両者間に違いはあるとしつつ、カラカスのために共同して取り組むための対話を呼びかけた。また市民の選挙参加に祝意を表明するとともに、首都区における治安対策に緊急に取り組む意向を示した。
(b)また同日、カプリレス・ミランダ州知事候補(正義第一党(PJ))も、今後政党色やイデオロギーに関わらず同州の利益のために取り組むことを表明し、チャベス大統領との対話を行う用意もあると述べた。また地方分権プロセスを深化させることを期待するとして、国会に対し地方分権関連法案を議論するよう求めた。また州政府職員が書類等の持ち出し等を行っている可能性に言及し、職員に対して法から逸脱した行動を行わないよう呼びかけつつ、現在行われている社会プログラムについては、自身の統治下においても継続する意向を示した。
(ホ)国軍による選挙プロセス評価
24日、選挙プロセスにおける国軍による治安対策「プラン・レプブリカ」を指揮した、ゴンザレス国軍作戦戦略司令官は、23日の投票日に於いてグアリコ州及びアンソアテギ州において政治的対立により3名が死亡し、また全国で206名が逮捕されたと発表した。逮捕容疑の多くは選挙機器破損によるものである。また同時に、政治関係者及び国民に対して、市民として成熟を続けると共にベネズエラの良いイメージを国内外に示すためにも、規範及びCNEを尊重し、CNEが発表した結果を尊重するよう呼びかけた。
(ヘ)選挙監視団による評価
24日、選挙監視団として参加した国内NGOの「選挙の目(Ojo
Electoral)」は、最終報告書を提出し、今次選挙におけるベネズエラ国民の市民努力、情熱及び成熟を認識しつつ、全国で監視を行った投票テーブルのうち15%が、投票終了時間の午後4時以降にも投票者が列をなしていないにもかかわらず終了時間を延長したと報告した。同じく今次選挙に同伴した国際監視団は、同日夜CNEに対し報告書を提出した。
(ト)米州機構(OAS)の反応
24日、インスルサOAS事務総長は、コミュニケを通じて今次選挙が平静に実施されたことを評価すると共に、大勢の市民参加があったとして、右は民主制度を強化する成熟を示すものだと述べた。また、政府及び野党双方から対話及び問題解決のための協力を模索する姿勢が示されたことを評価した。 |