1.憲法修正国民投票
(1)再選制限撤廃対象者の拡大
(イ)5日、チャベス大統領は今次憲法修正案において大統領のみならず、全ての公職者を再選制限撤廃の対象とすることを提案した。これにより大統領の任期を規定する憲法第230条に加え、知事(第160条)、市長(第174条)、国会議員(第192条)及び州議会議員(第162条)の任期を定めた各条項の修正案も第二回国会審議に付されることになる。
(ロ)同日、野党執行部が記者会見を実施し、グアニパ正義第一党(PJ)幹事長が、国民投票で反対票を投じることは国内の政治対立を葬るとし、再度憲法修正案に反対の意思を表明した。
(ハ)7日、フローレス国会議長は、大統領のみの再選制限撤廃を規定した当初案に、対象者を全公職者に拡大した条項を付帯することは、原案の基本概念を変更するものではないと強調し、国民投票では各条項を分けることなく、全公職者に対する再選制限撤廃の賛否を1つの質問として問うと発言した。
(2)国会による第二次憲法修正案審議
14日、国会特別審議に於いて、全公職者に対する再選制限撤廃を可能にする憲法修正案が、賛成多数で承認され第二次審議を通過した。国民投票における質問の文言は「国民投票による選挙を通じて公選職務を遂行するため、男女いずれの市民も、同一の役職において憲法上規定された任期中の立候補を可能にし、国民の政治的権利を拡大する、国会発議による憲法第160、162、174、192及び230条の修正を承認しますか?」
(3)国会からCNEへの国民投票実施法案の提出
16日、CNEは、国会特別委員会より国民投票実施法案を提出されたと発表し、2月15日(日)に憲法修正国民投票を実施する旨発表し、国会ホームページ公表文書によれば国民投票で可決された場合の新条文は以下の通り。新条文は原文から各下線部分を削除したものとなる予定。
1.第160条【知事への就任要件、任期】
各州の政治及び行政は、知事の責務である。知事への就任要件は、ベネズエラ人であること、25歳以上であること、及び聖職に就いていないことである。知事は、4年の任期であり、投票者の過半数により選出される。知事は、一回に限り次期に再選されることができる。
2.第162条【州議会の権限、州議会議員への就任要件】
(一部省略)州議会議員は、4年の任期で選出され、最長で連続2期まで再選されることができる。州議会の組織及び機能に関する制度については、国の法律でこれを規律する。
3.第174条【市長の責務、就任要件】
市の管理及び運営は、市長の責務であり、市長は、市における文民の最高権威でもある。市長への就任要件は、ベネズエラ人であること、25歳以上であること、及び聖職に就いていないことである。市長は、4年の任期であり、投票者の過半数の賛成で選出される。市長は、1回に限り次期に再選されることができる。
4.第192条【国会議員の任期】
国会議員は、5年の任期であり、最長で連続2期まで再選できる。
5.第230条【共和国大統領の任期、再選】
大統領の任期は6年とする。共和国大統領は、新たな任期について、連続して1回に限り再選されることができる。
(4)CNEの各種発表
(イ)20日、CNEはテレビ及びラジオ上での投票キャンペーンの実施について、21日午後4時までにCNEに届け出た団体のみが、事前にCNEから許可を受けた投票コマーシャルを1日1放送局において3分間放送することが可能であるとした。またチャベス大統領の投票キャンペーンの参加に関して、大統領を含む全ての公職者は、選挙活動のための広告及び宣伝に関する規範により、公的機関に於いて投票キャンペーンを行うことは禁止されると指摘した。
(ロ)また投票結果に関しては、全投票終了後2、3時間を目処にCNEが第一次発表を公表するとし、それ以前にメディアが結果や得票情勢の報道を行うことを禁止した。
(ハ)同日、ルセナCNE議長は国民投票の終了時間を午後6時とする旨決定したと発表し、右措置は選挙及び政治参加基本法を修正する必要なく実施できるとの見解を示した。
(5)世論調査による見解
(イ)28日、当地調査会社Datanalisis社による、憲法修正国民投票に関する世論調査結果において「賛成」が51.5%、「反対」が48.1%という結果が出、政府系調査会社以外では初めて「賛成」が優勢な結果となった。
(ロ)31日、当地調査会社Hinterlaces社による憲法修正国民投票に関する世論調査において45%が賛成、54%が反対に投票すると回答し、投票に「必ず」もしくは「おそらく」行くとの回答は79%に上った。同社の分析によれば、今次憲法修正案に十分な支持が得られていない背景として、チャベス支持派がチャベス大統領の政治的な「やり過ぎ」に嫌悪感を抱いていることに加え、またその施政に於いて結果が出ていないことに対する失望が、チャベス派の選挙活動を担うPSUV党員にまで士気低下の影響を与えているのではないかとの見方が示されている。 |