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  ベネズエラ・マンスリー政治情報(平成22年6月)

 

政 治 概 況

1.内  政

( 1)上旬,ベネズエラ石油公社(PDVSA)子会社食品会社,ベネズエラ食糧生産・流通公社(PDVAL)向けの腐敗した食糧が輸入食糧コンテナから相次いで発見。

(2)11日,カラカス首都区裁判所は,スロアガ・グロボビシオン局社主に対して,昨年発覚した自宅敷地内でトヨタの新車24台を不正に所持していた件に関して逮捕状を発出。国内外から表現の自由の侵害として,強い批判。

(3)23日,9月26日に予定されている国会議員選挙に立候補することが決定している閣僚6名を含む9名の閣僚の交替が発表。

2.外 交

( 1)9日,チャベス大統領は,国連安保理でイランの核開発に対する追加制裁が採択された決議に関し,帝国主義による工作であるとし,全く価値のないものであると批判。

(2)21日,ベネズエラ外務省は,コロンビア大統領選挙で勝利したサントス次期大統領に対する祝意のコミュニケを発表。

(3)26日〜27日、シリアのアル・アサド大統領が当地を初訪問し,チャベス大統領と首脳会談し、科学技術、農業、貿易に関する9つの合意に署名。

             

内 政

1.PDVAL向け食料品にかかる汚職の疑い

(1)事件あらまし

ア.1日,ボリーバル国家諜報サービス(Sebin)は5月25日にカラボボ州プエルト・カベージョ港で,賞味期限切れのために品質の劣化した基礎食糧約3万2千トンを発見し,右に関与していたとして,プリド元PDVAL社長を逮捕した。

イ.1日,キンテーロ元コヘーデス州会計検査官は,同州ティナキージョ工業地帯の約800個のコンテナが09年8月から放置されており,約2万4千トンの食料品が腐敗しているとして検察に対して調査を要請した。

ウ.2日,バレンシア工業地区にある倉庫会社Transgar社の社員らが,PDVAL用食料品を積載した同社の414個のコンテナが,1年以上も放置されていると訴えた。

エ.3日,Sebinはプエルト・カベージョ港ラ・ベリサ工業地帯に設置してあるCealco社所有の1,103個のコンテナから品質が劣化した食料を発見した。

オ.4日,当局はプエルト・カベージョ港税関区域にある,腐敗した食料を積載した数千個のコンテナを調査し,右のうち80個のコンテナにはブラジルからの輸入肉が積載されており,同港到着から約8ヶ月が経過しているが,腐敗はしていないとされている。

カ.7日,Sebinは本件に関連し,09年に要職に就いていたフローレス元PDVAL社長及びベタンコート同オペレーション担当役員を逮捕した。

 

(2)政府の反応

ア.2日,チャベス大統領は,本件の背後には汚職があるとし,当局に対して更なる調査を命じた。また3日にも,閣議において,本件に関し言及し,PDVAL及びMERCALは1千万トンの食糧を扱っており,今回摘発された腐敗食料はPDVAL及びMERCALの取り扱い量全体の1%にも満たないことを強調し,安価かつ良品質の食糧の生産及び流通システムは確立されていると発言した。尚,一連の事件に関連しているPDVSAの総裁を兼務するラミーレス・エネルギー石油大臣に対し,無条件の支援を提供すると発言した。

イ.4日,ラミーレス・エネルギー石油大臣は,本件に関して責任を持って状況を明らかにすると述べた。

 

(3)本件に関する関係者の見方

ア.3日,エンリケ・サラス・フェオ・カラボボ州知事(反政府派)は,今次騒動の背景には,関係者が輸入食料品に適用される1ドル=2.6BsFのレートで計算された売り上げを,平行レートである1ドル=約8Bsfで換金し利益を得ていること及び,通常,コンテナ保管料は1日1万4,000BsFであるにも関わらず,腐敗食料を積載していた1,200個のコンテナは1万6,800BsFの支払いを行っており,右によりPDVSAは港湾に年間5億BsFの超過料金を支払い利益を供与していたと指摘した。さらに,本案件は港湾に関係する閣僚及び国軍(FAN)関係者も関与した汚職であるとの考えを示した。

イ.5日,リーバス・プエルト・カベージョ商工会議所会頭(反政府派)は,通常輸入食料を流通まで港湾に設置する期間は17日から25日であり,今次問題の背景には,政府が国内に流通及び販売可能な量以上の食糧を輸入しすぎたこと及び,保管倉庫において食料を適切に保存する冷蔵設備を有していなかったことがあるとの見解を示している。

ウ.8日付,ウルティマス・ノティシアス紙は,今次事件が発覚した背景には,元PDVAL役員による,PDVAL向けに安価に輸入された食糧の国内外(コロンビア,キュラソー等)への転売を大統領府及びSebinに告発した文書を元に,Sebinが調査に乗り出したためと報じている。

                  

      

2.グロボビシオン局に対する制裁

(1)事件あらまし

ア.11日,オルテガ検事総長は,昨年5月21日にスロアガ・グロボビシオン局社主が自宅敷地内でトヨタの新車24台を不正に所持していた件で,カラカス首都圏第13裁判所が同社主及び子息に対し逮捕状を発出し,同日,Sebinが,自宅を捜索したと発表した。同社主及び子息は,2月11日のラベル社長解任と同日に,刑事裁判のための予防拘禁措置が裁判所によって解除されていたが,スロアガ社主は3月25日にも米州報道協会(SIP)半期総会での発言に関して逮捕された後,国外渡航禁止措置を受け保釈されていた。

イ.12日,グロボビシオン局は,本件は,同局の報道の自由に対する政府による新たな蹂躙であると批判したコミュニケを発出し,ベネズエラでは異なった意見を表明することが犯罪であり,スロアガ社主は,政府を強く攻撃しているグロボビシオン局の社主であるという立場だけで,追及をうけていると表明した。また,14日には,スロアガ社主がグロボビシオン局の電話インタビューに応じ,本件は同局を黙らせるための目的で行われている,チャベス大統領による迫害であり不正であると糾弾し,国民に対し希望と信頼を持って,憲法を侵害しているチャベス政権に対抗するよう呼びかけた。

 

(2)ベネズエラ政府の反応

ア.チャベス大統領は,逮捕状発出に先立つ今月3日,自身のテレビ・ラジオ番組「アロー・プレシデンテ」において,司法が同社主を保釈したことに疑問を呈していた。また,13日の「アロー・プレシデンテ」では,司法は独立した調査を行っているとし,同社主自身が無実だと思うのなら,なぜ逃亡しているのであろうかと述べ,また15日にも,本件が自分(チャベス大統領)による迫害だと言うのであれば,なぜ法廷において説明をしないのかと批判した。

イ.12日,マドゥーロ外務大臣は,裁判を避け,逃亡するのはベネズエラの伝統的なオリガルキーのやり方であると批判して,本件に関し国際社会がベネズエラ政府を非難していることに対して,ベネズエラの内政問題として尊重するように強く要求すると述べた。

ウ.18日,エル・アイサミ内務司法大臣は,行方をくらましているスロアガ社主及びその息子の逮捕協力をインターポールに対し要請した旨発表した。

エ.18日,オルデガ検事総長はラジオ番組で,表現の自由とは関係のない問題での犯罪の容疑者に対し逮捕状を発付することで,報道の自由に対する侵害あるいは政治的迫害であるとの議論が起こることはばかげている旨述べた。

オ.モラーレス最高裁判所長官は,国際機関から懸念が表明されている点に言及し,「国際機関は各国の法制度を尊重すべきであり,国内の司法手続きの過程にある問題に対し介入すべきでない。また,国際機関の職員が各国の国内問題について言及する場合は,その国際機関の名ではなく,個人の名において行うべきである。」旨述べた。

 

(3)各方面の反応

ア.14日,クローリー米国務省広報担当国務次官補は,本件はベネズエラにおいて引き続き報道の自由が侵害されていることの例であり,真剣に懸念すべきであると表明し,米州民主主義憲章を遵守するよう求めた。

イ.ラ・ルエ国連表現の自由委員会委員は,今次スロアガ社主に対する逮捕状発出は新車の不法所持によるものとされているが,SIP半期総会における同社主の発言との関連を懸念していると述べ,意見の相違によって罰するべきではないと発言した。また,17日にも声明を発出し,いかなる政府も反政府派の批判を刑罰を持って黙らせる権利はないと強調し,本件は「政治的な理由」が疑われると述べて,ベネズエラ政府に対して,同国の表現及び報道の自由についての実態を調査するための代表団の訪問を受け入れるよう要請した。

ウ.14日,ピンエイロCIDHベネズエラ担当委員及びボテロ表現の自由特別委員長は,ベネズエラの表現の自由に関して深く憂慮していると述べ,こうした状況に関して報告するように求める書簡をマドゥーロ外務大臣宛に発出した。

エ.18日,グロボビシオン社主に対する逮捕状発付に反対する市民団体が,政府に抗議し街頭デモを行うとともに,グロボビシオン局の報道姿勢を支持する旨の書簡を同局代表に手交した。

オ.パトリシオ・ウォーカー・チリ上院議員等が,チリ政府として,米州機構(OAS)に対しベネズエラへの監視を強化するよう要請すべきとの提案を行うため,上院議会で本件を取り上げるべく働きかけている。

 

 

 

3.閣僚の交替

 チャベス大統領は,9月26日に予定されている国会議員選挙に立候補することが決定している閣僚6名の交替含め,計9閣僚を任命した(公共事業・住宅大臣については新たに交通・通信省と住宅省に2分しそれぞれに閣僚を任命)。

(1)ナンシー・ペレス・シエラ女性・ジェンダー担当大臣

(2)イシス・オチョア住民自治大臣

(3)リカルド・モリーナ住宅大臣

(4)フランシスコ・ガルセス・ダ・シルバ交通・通信大臣

(5)ジェニファー・ヒル・ラジャ基礎教育大臣

(6)エクトル・ロドリゲス・スポーツ大臣

(7)マウリシオ・ロドリゲス通信情報大臣

(8)ファン・カルロス・ロジョ農業・土地大臣

(9)マリア・イサベラ・ゴドイ大統領府大臣

 

外 交

1.対コロンビア関係

( 1)21日,ベネズエラ外務省は,コロンビア大統領選挙で勝利したサントス次期大統領に対する祝意のコミュニケを発表した。

(2)24〜25日のALBA首脳会合の中で,チャベス大統領は、サントス次期コロンビア政権との二国間関係について,コロンビア新政権が両国間の敬意を回復させるかどうかを見極める必要があるとした上で、「新政権がコロンビア領内の米軍基地を撤退させることが両国関係改善のための良いシグナルになるであろう。」「サントス次期大統領が、08年3月のエクアドル領「侵略」が誤りであったと認めることを望む」と発言した。

   

       

2.対米関係

(1)28日、ホワイトハウスは次期駐ベネズエラ大使にラリー・パーマー氏を指名する旨発表した。

(2)28日、バレンスエラ米西半球担当国務次官補は、「オバマ大統領はすべてのラ米諸国との協力を推進してきたが、率直に言ってベネズエラは米国との対話を望んでいるようには見えず、ベネズエラとの関係はラ米地域で最も困難である」と発言した。

(3)30日、ダディ駐ベネズエラ米大使は、米国独立記念式典において、私有財産等に関するベネズエラ政府の政策によって、両国の歴史的な経済相互補完関係が損なわれることを懸念していると述べた。

 

 

.対 ベラルーシ関係

 9日,シェイマン・ベラルーシ国家安全委員長が当国を訪問し,チャベス大統領と会談した。

   

 

.対 中東関係

(1)対イラン関係

 9日,チャベス大統領は,同日国連安保理でイランの核開発に対する追加制裁が採択された決議に関し帝国主義による工作であるとし,全く価値のないものであると批判した。また10日には,ベネズエラ外務省が右を非難する声明を発表した。

(2)対シリア関係

 26日から27日にかけて、シリアのアル・アサド大統領が当地を初訪問し,チャベス大統領と首脳会談が行われ、科学技術、農業、貿易に関する9つの合意が署名された。またチャベス大統領は、両国合弁企業がシリアにおいて精油所を建設する旨発表し,更にシリアとの間に1億ドル規模の二国間基金を創設し、ベネズエラが5千万ドルを拠出するとの意向を示し、二国間銀行の創設にも意欲を示した。

   

 

5.対ボリーバル同盟(ALBA)関係

 24〜25日、チャベス大統領は、エクアドルで開催された第10回ALBA首脳会合に出席した。

 

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