総 論
(1)当国の政情
2007年12月2日に、憲法改正国民投票が行われ、憲法改正案は僅差で否定されました。投票後、憲法改正賛成派、反対派による示威運動は見られなくなり、2008年に入ってからも反体制派の見るべき動きはなく、政情は平穏に推移しています。
その後、2008年3月1日、コロンビア軍がエクアドルとの国境におけるFARC掃討作戦において同国側に越境して攻撃を行い、FARCのNo.2であるレジェス幹部を含むFARCメンバー計17名が死亡した件につき、チャベス大統領はコロンビア国境への部隊派遣、在コロンビアの大使館閉鎖を命じると共に、ウリベ大統領を激しく非難、コロンビアとの国境付近一帯に陸軍を派遣するなど一時的に、一触即発の状態となりましたが、同7日にサント・ドミンゴ(ドミ(共))に於いて開催されたリオ・グループ首脳会合に出席したチャベス大統領が、コロンビア政府軍のエクアドル領内FARC掃討作戦に起因する域内関係悪化に関し、各国に対し冷静な解決を呼びかけ、ウリベ大統領がチャベス大統領、コレア・エクアドル大統領を含む各国首脳と握手を交わし、本件を収束させる形で終了しました。これを受け、チャシン内務司法大臣は、国境における状況も平常化し、本件に於ける一連の騒ぎは終息しています。
(2)コロンビア国境付近の状況
当国はコロンビアと約2000Km以上にわたり国境線を接しており、コロンビア国境地帯(スリア州、タチラ州、アプレ州)は、依然としてコロンビア・ゲリラ「FARC」、「ELN」及びこれらと結びついた当国の誘拐組織並びに麻薬密売組織が活動しています。コロンビアで生産された麻薬(コカイン)は、北米やヨーロッパ市場へ密輸
され、当国は通過国となっており、上記国境地域においては、しばしば大量の麻薬が押収されています。
また、コロンビア国境地帯(スリア州、タチラ州、アプレ州)における誘拐事件は、恐喝事件及び依頼殺人事件とともに深刻な問題となっています。
(3)2007年中の当国の一般治安情勢
2003年のピーク(ベネズエラ史上過去最悪の犯罪発生件数を記録した年)を上回り、総犯罪認知件数では、昨年(2007年)が過去最高(266,134件)を記録しました。
一般犯罪については、2003年のピーク(総犯罪件数:265,344件)を境に一端減少傾向となっていましたが、2005年8月から増加傾向に転じ、2006年は総犯罪件数が237,916件、2007年は266,134件発生し、対前年比では28,331件の増加を記録し、増加傾向に歯止めがかからない状況となっています。
主要犯罪である殺人については昨年、13,158件発生し対前年比で902件(全国)の増加を記録しました。強盗については、67,689件発生し、対前年同期比で8,157件(全国)の増加。身の代金目的誘拐については、279件発生し、対前年同期比で47件(全国)の増加となっており、治安悪化が犯罪統計上も顕著となっています。
また、ベネズエラ全体の凶悪事件の20%以上がカラカス首都区で発生しており、特にリベルタドール市(セントロ地区、1月23日地区、エル・パライソ地区、エル・セメンテリオ地区)、スクレ市(ペターレ地区)及びその他の貧民街を有する市では、違法けん銃、レンタルけん銃を使用した凶悪犯罪が多発し、極めて危険な状況にあります。
(4)犯罪の特色
ベネズエラにおける凶悪犯罪(殺人、強盗、誘拐等)は、従来「ランチョ」と呼ばれる貧民街若しくはカラカス首都区の中心街(リベルタドール市セントロ地区、サバナグランデ地区等)で発生していましたが、近年ではその発生場所が従来比較的治安が良いと言われてきたカラカス首都区チャカオ市等、邦人の皆様が主に居住されている地区にまで広がってきました。
また、手口別(殺人、強盗、身代金目的誘拐事件等)に昨年の発生件数を見てみると、カラカス首都区の発生件数よりも、他の州における発生件数の増加が顕著であることから、凶悪犯罪の地方都市への拡散化傾向が伺えます。
(5)現職警察官による犯罪の増加
ベネズエラでは、観光地をパトロールする制服警察官や、路上等で警戒している国家警備軍等の隊員から職務質問を受け、パスポート等に対する言いがかりをつけられ、現金の強要、強請等の被害に遭う邦人旅行者が
出ています。また現職警察官等が共謀した凶悪犯罪事件も発生していますので、これら犯罪に巻き込まれないよう十分な注意が必要です。
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