2.最近の犯罪発生状況
当国における主な犯罪発生認知状況は、日本との比較はもちろん、一般的に治安が悪いと言われている中南米地域と比較しても非常に高い犯罪認知率となっています。
(1)2003年中における重要犯罪の発生状況
(イ)殺人事件(既遂)
当国における殺人事件の発生件数は近年急激に増加して、特に2003年中の殺人事件総認知件数は、過去最高を記録した2002年を大幅に上回るとともに、統計史上初めて1万件を突破しました。
なお、殺人事件について、当国と最近治安が悪くなったといわれる日本の人口10万人あたりの認知件数を比較した場合、当国は日本の約50倍の発生率で、カラカス首都区と東京を比較した場合は、カラカス首都区は東京の約60倍の発生率でした。
【参考】
1999年 |
2000年 |
2001年 |
2002年 |
2003年 |
5,693件 |
8,022件 |
7,960件 |
9,570件 |
11,330件 |
※人口約2,500万人足らずの当国で1日平均31件の殺人事件が発生していることになります。
(ロ)強盗事件(含む自動車強盗)
2003年中の強盗事件総認知件数は81,697件(全窃盗犯罪の合計をも上回る件数)で、過去最高を記録した2002年を1,161件上回り、やはり過去最高を更新しました。強盗事件について、当国と日本の人口10万人あたりの認知件数を比較した場合、当国は日本の約60倍の発生率であり、カラカス首都区と東京を比較した場合は、カラカス首都区は東京の約53倍の発生率でした。
(ハ)誘拐事件
2003年中の略取誘拐事件発生件数は966件でしたが、そのうち身代金目的誘拐事件発生件数は277件と過去最高を記録した2002年を78件上回り、これも過去最高を更新しました。また、最近、東洋人及びイタリア系住民は身代金の払いがよいという噂が犯罪組織内に広まっているという情報もありますので注意が必要です。2003年中、短時間誘拐も292件発生し(過去最高を記録した2002年を37件上回りました。)、過去最高を更新しました。
略取誘拐事件につき、当国と日本の人口10万人あたりの認知件数を比較した場合、当国は日本の約22倍の発生率であり、カラカス首都区と東京を比較した場合は、カラカス首都区は東京の約18倍の発生率でした。
(ニ)窃盗事件
全窃盗犯総認知件数も2002年は過去最高を記録しましたが、2003年は77,208件(対前年比+2,286件)発生し、同犯罪も過去最高を更新しました。
(ホ)他国との比較
中南米の中でも特に治安が悪いとされているコロンビアの首都ボゴタ及びブラジルのサンパウロと比較した結果は、下記のとおりでした(人口10万人あたりの認知件数)。
(a) カラカスとボゴタとの比較
比較対照とした主要犯罪(殺人、傷害、強盗、窃盗、誘拐、車両盗)については、全ての犯罪でカラカスはボゴタより発生率が高く、特に、殺人は約3.
2倍、強盗は約131倍で、2002年、唯一カラカスよりボゴタの方が発生
率の高かった誘拐事件も2003年はカラカスが上回りました。 |
(b)
カラカスとサンパウロとの比較
傷害、強盗、窃盗、車両盗については、サンパウロの発生率が上回ったものの、治安のバロメーターとも言える殺人についてはカラカスはサンパウロの約
2.5倍発生し、その他、誘拐(サンパウロの約12倍発生)、強姦(1.1
倍)もカラカスの発生率が上回りました。 |
(2)犯罪の拡散化傾向
これまで比較的安全であると言われてきた主な邦人居住地区における犯罪発生率が、近年急激に上昇しています(同地区における犯罪発生率は、10年前はカラカス首都区全体の0.5%であったものが、最近では5.75%まで上昇している。)。また、カラカス首都区内の各月ごとの統計結果によれば邦人多数居住地区であるアルタミラ地区やロス・ドス・カミーノ地区が時折、カラカス首都区における自動車強盗事件発生件数のワースト10位以内に位置され、邦人の皆様がよく買い物に行かれるチャカイート地区が強盗事件発生件数のワースト10位以内に位置されるなど犯罪の拡散化傾向が伺えます(これまで10位以内の地区は貧民街又はカラカス中心街ばかりであった。)。
(3)違法銃器の拡散化傾向
当国では銃器の所持は許可制となっていますが、実際はヤミで取り引きされた違法銃器が相当数出回っています。また、凶悪犯罪に使用された凶器の種類を調査しますと90%以上がけん銃、散弾銃等の銃器です。治安機関に確認しますと、犯罪に使用される銃器の大部分がこの違法銃器であり、治安機関が犯罪者と対峙した場所は、必ずと言っていいほど銃撃戦となり、大きな社会問題となっています。
(4)薬物犯罪の多発化傾向
薬物犯罪は警察や軍の厳しい取り締まりにもかかわらず、国内でも増加しています。当国は薬物、特に麻薬輸出国であるコロンビアからアメリカやヨーロッパ等への中継基地となっている他、セントロ(市内中心部)地区の路上で公然と薬物が販売されていますが、絶対にこれらの物に手を出してはいけません。薬物は習慣性があり、一度使用するとやめられなくなることから、一度だけならと興味本位で始めた者が廃人となったケースが非常に多いのが事実です。また、当国の薬物に関する法律の法定刑は非常に重く、自己使用のために少量を所持しているのが見つかっただけで、10年以上20年以下の禁固刑(実刑)となってしまいます。 |